6月の末に、北海道のビルの窓ふきの現場(ブランコ作業)で墜落事故が発生し、札幌の事業所の作業者が重症を負ったというので、ちょっと行って来ました。
メインに使用していたフランス製のセミスタティックロープが笠木のエッジで切断し、ビルの3階の高さから墜落したもの。
ロープが切れたのは、ロープを左右に振りすぎたため、作業中に巻き付け養生が外れてしまい、直接ロープが笠木に接触したのが原因と推察されていました。
「ブランコ作業」と言いますが、遊具のブランコではありませんから、スイングは不安全で、やりすぎは危険です。
エネルギーの蓄積されていないロープ、すなわちテンションのかかっていない状態でロープは、鋭いエッジに接触し、たとえ擦れても、切れることはありません。
しかし、エネルギーの蓄積されたロープは、たちどころに切れてしまうので注意が必要です。
エッジには、ロープを接触させないのが一番ですが、接触がやむを得ない場合は、2重に養生を施すなどの対策が必要です。
さて、この事故が問題になっているのは、ロープの切断もさることながら、セーフティライン(ライフライン)を使用していたにもかかわらず、墜落が止まらなかった点です。
墜落阻止器具は、イタリア製のバックアップデバイスを使用していました。
これは墜落時にロープの上方または器具そのものを握ると、墜落が止まらず、器具と一緒に落下する可能性があります。
この現象は、カム式の墜落阻止器具に総じて言えるリスクです。
また器具を逆さまにセットすると、墜落は止まりませんから、これも失敗の可能性として考えられます。
当該デバイスは、取扱説明書に「トレーニングを積んで熟練してから使用すること。そうでない場合は、熟練者と一緒に使用するように!」との注意書きがあります。
はたして、被災者はちゃんとトレーニングを受けていたのでしょうか?
被災者は、下降器具にリグを使用していました。
いうまでもなく、ペツルのリグです。
ペツル製品は、通販はありませんから、容易に購入できません。
販売店にも制度を設けていますから、無責任な販売などありえません。
被災者はいったい、どのようなルートでロープアクセス用具を購入したのか、疑問点として浮かび上がっていました。
ともかく対策は、北海道GCAのブランコ講習会(実技訓練)を受けるということで落ち着きそうです。
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