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    写真3:ジャミングローラー式の墜落阻止器具
    写真3:ジャミングローラー式の墜落阻止器具

    リスク低減措置案

    ジャミングローラー式の墜落阻止器具(写真3参照)を使用します。ジャミングローラー式は、作業者の動きに連動してロープ上を滑るので、下降が快適です。墜落時に作業者がまちがって器具をつかんでしまっても、墜落は止まります。ロープ上で作業者よりも上部に留まる機構なので、墜落阻止時の衝撃荷重が低く抑えられます。ひとりでにロープが外れる可能性がないよう斬新なデザインが施されています。エネルギーアブソーバーと併用するので、墜落阻止時の衝撃荷重が6kN以下に抑えられます。本体とエネルギーアブソーバーが一体化しているので、高いところから落とす心配がありません。カムロック式と比べたら、安全性は格段に向上しています。ただし残留リスクはゼロではありません。残念ながら、この残留リスクを数値で表すことができないのが3×3のリスク配列の限界です。

    1. 今後の検討課題(残留リスク)

    ジャミングローラー式の墜落阻止器具で作業者を墜落から保護するためには、滑り量+エネルギーアブソーバーが伸びたときの長さ+衝撃荷重によってライフラインが伸びる長さ+身長+地面や障害物から1m以上の確保が肝心です。現場の高さ(ロープの長さ)にもよりますが、地上約7m以下のところで、大きな墜落をするような不安全行動をしてはいけません。デバイスが正常にはたらいても、作業者が地面にたたきつけられる可能性は否定できないからです。正しい使用方法をマスターするには、メーカーが認めるところのトレーニングが必要です。経年劣化等による機能低下に備え、日ごろから点検を怠ってはいけません。また現場に持ってくるのを忘れたら役に立ちません。職長は、作業のかかる前に、こうした残留リスクを、作業者によく理解させる必要があります。これがリスクアセスメントが全員参加といわれるゆえんです。

     おしまい  ご安全に


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    写真2:カムロック式の墜落阻止器具
    写真2:カムロック式の墜落阻止器具

    墜落阻止器具がカムロック式(写真2参照)の場合

    2008年以降、現場でよく見かけるようになったのがカムロック式の墜落阻止器具です。これはEN12841-Aという欧州規格のロープアクセスのデバイスです。保護具ながら、オンロープの作業においては、工学的対策に数えられます。しかしカムロック式の墜落阻止器具は総じて、器具をつかむとロープがロックされず、滑ってしまい、墜落した作業者が地面にたたきつけられる可能性を秘めています。参考までに、安全帯の規格によるグリップ式墜落阻止器具もカムロック式ですから、同じリスクがあります。

    また、下降の際にロープに引っかかることがよくあり、下降がわずらわしくなります。そこで気の利く作業者は、引っかからないようにカラビナを上方へ持ち上げたまま下降するテクニックを習得しました。早い話が、安全装置を外すことを覚えたのです。便利なので、あっという間に広まりました。しかし、案の定相次いで墜落事故が発生し、今年、北海道と東京でケガ人が出ました。地面に近いところからの墜落だったので、一人は休業4日以上の重傷、もう一人は精密検査の結果、問題はありませんでした。それでも会社全体の作業に及ぼしたロスタイムは、さぞかし大きかったものと推察されます。ケガにとどまらず、作業のロスもリスクです。これらの残留リスクを見積もると、次のようになります。

    可能性1×結果3=3:リスクレベルⅡ(速やかなリスク低減措置が必要である)

    危険の源はデバイスそのものですから、これを摘み取り、さらに安全性の高いデバイスと交換することで、リスク低減を図ります。

    つづく


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    写真1:スライド
    写真1:スライド

    墜落阻止器具をリスクアセスメントする

     「ブランコ作業の墜落防止システム・墜落阻止器具」をテーマにリスクアセスメントを行いました。これは講師の先生に「模範的な解答である」と言われたので、参考までに以下に記します。

    1. 危険性または有害性と発生のおそれのある災害

    メインロープ側のトラブルで、墜落が発生したとき、バックアップの墜落阻止器具が正常に機能せず、ライフライン上を滑ってしまい、作業者が地面にたたきつけられて死亡しました。墜落の原因はメインロープ側にあります(ロープの取り付けを含む)が、墜落が阻止できなかったという点で、バックアップであるライフライン側の問題は見逃せません。危険の源は、墜落阻止器具です。

    1. 既存の災害防止対策とリスクの見積り

    墜落阻止器具がスライド(写真1参照)の場合

    作業者を墜落から保護するデバイスとして、ブランコ作業では長い間スライドが頻用されていました。「安全帯の規格」が安全のよりどころだったからです。なぜ「安全帯の規格」なのかというと、80年代前半、ブランコ作業のマニュアル作成に当たったGCAの先輩方が、東京労働基準局(今の東京労働局)に相談したことに端を発します。今でいうところのリスクアセスメントを実施したのです。リスクの低減対策に「必要に応じて行政方に相談する。または専門家に意見を求める」という項目があります。法を遵守させるのが行政官ですから、「安全帯の規格」に従うようご指示されました。

    しかし時は流れて、古い技術は陳腐化します。19年前になりますが、GCAが安全帯メーカーの協力で実施したスライドの実験で、たかだかカラビナ1個の倍落下(10㎝×2)で墜落が止まらず、重さ75kgの落下体が地面にたたきつけられてしまい、みなさんあっけにとられたことがありました。さらには、ブランコ作業でメインロープがほどけて墜落したさい、確実にスライドを使用させていたにもかかわらず、作業者が地面にたたきつけられ、死亡災害に至った事故も発生しました。スライドは、かなりの確率で、墜落が止まらないことがあります。本来スライドは、ゴンドラなど作業者がちゃんと足で立てる環境で使用する第2の墜落防止措置です。作業者がロープに支えられた垂直の作業環境で使用することは、まったくの想定外です。ブランコ作業に専用の器具がなかった時代には、それでも仕方がありませんでした。

    可能性2×結果3=6:リスクレベルⅢ(直ちに解決すべき重大なリスクがある)…

    それでもライフラインを使用しない一本吊りと比べたら、リスクは低く抑えられています。

    可能性3×結果3=9:リスクレベルⅢ(直ちに解決すべき重大なリスクがある)

    どちらもリスクレベルはⅢですが、ライフラインとスライドで9から6まで下がったのが3×3のリスク配列で分かります。

    つづく


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