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  • ロープの設置:もう一つのリスク低減対策

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    DSC08584_RDSC08558_Rロープの設置、すなわちリギングは、ロープ高所作業の安全を左右する重要なポイントです。
    ヒューマンエラーを引き起こすような、複雑な手法は勧められません。
    シングルアンカーによるメインロープとライフラインの設置は、単純で簡単で、よく見かけますが、シングルアンカーは、2個の支持物の間隔が、最大700㎜までが安全の目安で、1メートルも離れたら、危険な横ズレによるロープ切断のリスクが生じます。
    ビルの屋上の丸環では、決してやってはいけません。
    このリスク低減対策として、前回は、ダブルアンカーによるYハングを紹介しましたが、もう一つ、有効な低減対策があります。

    それは、リギングプレート(写真はペツルのポー・サイズM)でアンカーをつくる手法です。
    リギングプレートは、破断強度が36kNで、メインロープとライフラインを一緒に設置してもよい十分な強度があります。
    DSC08586_RDSC08587_RDSC08588_R写真のリギングプレートは、スリングで設置しましたが、じっさいの現場では、適切な長さのランヤード(ペツルのグリヨンなど)が必要になるでしょう。
    なぜなら、内角を90°以下にして、荷重の分散を図る必要があるからです。
    設置したリギングプレートの下方には、コネクタ用の穴が2個あるので、それぞれにメインロープとライフラインをつなぎます。
    必要とされる結策は、基本中の基本、フィギュアオブ8ループ(8の字結びで輪を作る)ただ一つです。
    リギングプレートの傾きによって、若干、ロープのズレが生じますが、切断のリスクはとても低いと推察されます。
    それでも、さらにリスクの低減を図るならば、ラビットノットによるダブルアンカー・Yハングです。
    リギングプレートが傾くことはありません。ロープが切れることもありません。
    リスクは十分、許容範囲まで下がります。
    ラビットノット増えた分、作業者に技術が要求されますが、この結策はフィギュオブ8ダブルループ(8の字結びで輪を2つ作る)という、8の字結びからの展開ですから練習してください。
    DSC08592_RDSC08593_RDSC08594_R

    リギングプレートを使用するメリットは、盛り替え(移設)が簡単で、早いという点です。
    連結部は、すべてコネクタなので、ロープがほどけるリスクがありません。
    コストはかかりますが、それは初期投資です。
    安全な技術を採用して、作業効率の向上を図ります。
    これを、「安全はカネで買うものである」といいます。

    ご安全に

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  • ロープの設置:リスクアセスメント教えます♫

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    労働安全衛生規則の一部を改正する省令、「ロープ高所作業における危険の防止」は、第539条の3で、「メインロープ及びライフラインは、それぞれ異なる支持物に、外れないように確実に緊結すること」と、定めています。
    DSC08584_R
    写真は、メインロープ及びライフラインの設置のイメージです。
    それぞれのロープのアンカーは、シングルです。
    上記省令に忠実に従った手法ですが、気を付けなければならないのは、省令は最低基準を示したものであって、最高基準ではないということです。
    何でもかんでもシングルアンカーで設置するのは考えものです。
    作業が不安全になる場合があり、むしろ不安全になる場合のほうが多いのではないでしょうか?

    メインロープの支持物とライフラインの支持物の間隔は、墜落阻止器具(フォールアレスター)のランヤードの長さから、最大で700㎜が安全の目安と推察されます。
    1メートル離れたら、もう危険です。
    物理的に2メートル振られるので、シャープなエッジなど危険源に接触したライフラインは切断してしまうからです。
    2メートル以上のコントロールできないスィングは、墜落と同等で、きわめて高いリスクであることを周知徹底する必要があります。

    ガラスクリーニング、防水、塗装、看板、打診調査、電気工事、その他でビルの屋上からロープでアクセスするときは、丸環を支持物として使用するのが普通です。
    しかし、丸環は6メートル間隔に設置されているので、間隔が広く、下降したいポイントにロープを持ってくるのが難儀です。
    ガラスクリーニングの場合、ビルの高さにもよりますが、1時間に3~4回、ロープを盛り替え(結び変え)るので、いたずらに手間のかかる手法は推奨できません。

    DSC08570_RDSC08574_RDSC08573_R
    次の写真は、多くの現場で見かける手法です。
    メインロープとライフラインを、下降器具(スポーツ用)で束ねます。
    当該下降器具は、ロープ上を自在に動かすことができるので、下降ポイントの調節が容易です。
    とても便利ですが、ほんとうは手抜きです。
    じっさいメインロープが外れたり、ほどけたりした場合、危険なスウィングが発生し、シャープなエッジ等、危険源に接触したライフラインは切れてしまいますから…DSC08575_R
    ライフラインは、メインロープの異常に影響されないよう設置しなければなりません。
    ですから、東京GCAの安全パトロールで見つかると叱られます。
    安全パトロールは労働基準局の安全専門官が立ち会っていますから、業務改善を命じられることがあります。

    DSC08568_R「役に立たない命綱」とタイトルを付けたホワイトボードの絵もまた、現場でよく見かける手法です。
    シングルアンカーで設置されたメインロープを、さらに別の支持物に、スリング又はランヤードを介して緊結します。
    これで、下降の位置が決まります。
    一方のライフラインは、メインロープを固定したスリング又はランヤードにチョイ掛けし、いわゆるディビエーションの形に仕上げます。
    これもまた手抜きです。
    メインロープの破断によって、即、危険なスィングが発生し、ライフラインがシャープなエッジによって切断されてしまいますから…
    連続してメインロープも切れるでしょう。
    環境によっては、メインロープのほうが先に切れるかもしれません。
    ライフラインは命綱です。
    補助ロープではありません。
    ちゃんと設置しないと、命取りになりかねません。

    DSC08581_Rロープは、適切な養生によって切断の危険から保護されますが、切れないように設置するほうが先決です。
    養生は、あくまでも2次的安全対策です。
    安全なロープの設置は、2枚目のホワイトボードの絵を参考にしてください。

    ① について説明します。
    メインロープ及びライフラインは、法令を遵守して、はじめに異なる支持物に、外れないように確実に緊結します。
    そののちスリング又はランヤードを介し、別の支持物に緊結して、下降の位置をきめます。
    ライフラインも、メインロープと同じ手法で設置します。
    それぞれのロープは、シングルアンカーで設置したのち、ダブルアンカーにバージョンアップさせます。
    こうした設置を、専門用語でYハングといいます。

    ② について説明します。
    メインロープとライフラインを同じ支持物に緊結してから、別の支持物にスリングとランヤードで引っ張り、Yハングをつくります。
    スリングとランヤードの強度は、ロープと同等ですから、強度的な問題はありません。
    ②は①と、同等です。コンプライアンスには抵触しません。

    ※注意:スリング及びランヤードはペツル製品等のEN規格品に限定。デージーチェーンなどスポーツ用品は対象外

    ダブルアンカーによるYハングのメリットを以下に示します。
    メインロープが切れても、ほどけても、ライフラインの位置は変わりません。
    そのため、危険なスィングによるライフラインの横ズレが発生しません。
    墜落阻止器具の位置を、できるだけ高くコントロールすれば、墜落のさいに発生する危険な衝撃荷重も低く抑えられます。
    墜落距離が、とても短いということです。
    しかも、ベクトルによって負荷が低減される分、シングルアンカーより勝っています。
    シングルアンカーに及ぼす負荷は100%ですが、ダブルアンカー・Yハングでは、60°のとき57%に低減します。
    負荷の低減は、支持物が破断するリスクを低減させます。
    設置は容易で、ムダな時間がかかりません。
    いいことずくめでしょう♫

    次回、ビッグロック日吉店のロープアクセス講習会では、設置のための具体的なメソッドを教えます。

    ご安全に

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  • ロープの設置:不安全な設置の仕方を教えます

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    ステンレス製の雨樋や、笠木のジョイント部は、シャープなエッジの最たるもので、ロープの切れる事故が、ガラスクリーニング業において時々発生します。
    岩やコンクリートのエッジも危険で、ロープに鋸の歯を当てるのと同じことになります。
    人ひとりの体重と同じ負荷をかけたロープ(巻き型養生あり)を、シャープなエッジに当て、横ズレさせると、わずか一往復半で切れることは、実験動画を何度も繰り返し見てもらっている人たちには、その危険性をよくご理解いただけているものと思います。
    ロープの保護として養生は、完璧ではありません。

    事故を防ぐためには、メインロープが切れても、作業者を保護しなければならず、そのためにライフラインでバックアップを図ることは、しごく当然のことといえます。
    公示された国内法(ロープ高所作業)でも、ライフラインの設置が義務付けられています。
    DSC08558_R
    写真は、設置されたメインロープとライフラインのイメージです。
    このように並列した支持物を、それぞれ2個づつ使用して、メインロープとライフラインを設置する方法は、いろいろな企業・団体で、ひろく採用されています。
    支持物間の距離は、フォールアレスター(墜落阻止器具)のランヤードの長さから、最大700㎜が有効と推察されますが、ビルの屋上の丸環で、これと同じことをやるのは、いかがなものかと思われます。

    DSC08557_Rどういうことかというと、丸環というものは、約6メートル間隔で設置されていますから、ライフラインはメインロープ側に斜めに引っ張られてしまいます。
    そのため、メインロープに切断、はずれ、その他異常が発生すると、たちまちライフラインが笠木上を横滑りしてしまい、切れてしまうからです。
    このような設置は、ライフラインに命綱の意味がありません。

    墜落の衝撃という、過大な負荷のかかったロープが切れるときは、一気にエネルギーが放出されるので、爆発と同じ現象がおきます。
    破裂音が発生し、破断したロープは、縮んで、短くなるのが特徴です。

    過大な負荷をかけたライフラインの切断面
    過大な負荷をかけたライフラインの切断面
    約30kgの負荷をかけたメインロープは、ステンレスのエッジを3回こすれば切れます!
    約30kgの負荷をかけたメインロープは、ステンレスのエッジを3回こすれば切れます!
    切断面の比較:右がメインロープ、左がライフライン
    切断面の比較:右がメインロープ、左がライフライン

    ライフラインは、墜落阻止時の衝撃という、過大な負荷ががかかるロープであることをよく理解しなければなりません。
    ライフラインは、メインロープの影響を受けないよう設置する必要があります。

    また、ホワイトボードの絵で示したように、それぞれのロープを設置した支持物の、次の支持物(AとB)が、役に立たないんだということも、よく理解しておくといいでしょう。DSC08552_R

    次回28日のロープアクセス講習会では、安全で、簡単で、実用的なロープの設置方法を教えたいと思います。

    ご安全に

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