FTGロープアクセス

  • もやい結びが、危険といわれる理由

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    もやい結びには、作業中ほどけにくく、作業後はほどきやすいという利便性があり、長い間使用されてきました。
    しかし、ヨーロッパの登山・レスキューにおいて、ほどける事故が多発したため、70年代には登山のテキストから消えたといわれています。
    記憶が正しければ、93年にイタリアで開催されたクライミングの世界大会で、ある選手が、もやい結びで結んだロープがほどけてしまい、墜落して負傷したため、緊急に、残りの選手全員、8の字結びが命じられたことがありました。
    この試合には、平山ユージも出ていました。

    もやい結びは、まっすく引っ張る分にはほどけない。
    もやい結びは、まっすく引っ張る分にはほどけない。

    国内では、この事件がきっかけとなり、もやい結びが使われなくなっていきました。

    もやい結びは、結び目を折り曲げると簡単にゆるみ、数回繰り返すと、ほどけます。
    先のイタリアでの事故は、選手が何度も同じ場所を行ったり来たりしたさいに、もやい結びが繰り返し突起物に接触したのが原因といわれています。

    ループを、あらぬ方向に引っ張ると…
    ループを、あらぬ方向に引っ張ると…
    「リング負荷」でゆるむ
    「リング負荷」でゆるむ
    ほどける!
    ほどける!
    もやい結びがほどけて、ひっくり返った人
    もやい結びがほどけて、ひっくり返った人

    また、もやい結びは、ループをあらぬ方向に引っ張ると、いとも簡単にほどけます。(写真参照)
    これを文献(生と死の分岐点)では、「危険なリング負荷」といい、警鐘を鳴らしています。

    もやい結びは、命綱に使用すると高いリスクが生じるので、メインロープやライフラインの結策には不適切です。
    ロープ高所作業の改正省令により、各団体で、特別教育のテキスト作成が始まりましたが、そのテキストに、もやい結びが載らないことを願ってやみません。

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  • 8月28日のロープアクセス講習会

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    8月28日のロープアクセス講習会には、8名の参加がありました。
    造園業の方の参加が増えているのが、このところの傾向です。
    DSC08601_RDSC08621_RDSC08625_R
    ツリーケアのテクニックは、本来、ロープアクセスとは似て非なるものなのですが、最近は、IRATAの有資格者の間で、ロープアクセスでツリーケアを行う人が増殖し、「IRATAアーボリスト」として売り出しています。
    IRATAですから、SRT(シングルロープテクニック)は認めませんが、2ロープ・2ポイントで作業する限り、ツリーケアの作業でもIRATAのログブックに実績の記録が残せます。
    DSC08602_RDSC08609_RDSC08618_R

    9月の、ビッグロック日吉店の ロープアクセス講習会は、4日(金曜日)と25日(金曜日)に開催します。

    ふるってご参加願願います。

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  • ロープの設置:必要なのは、基本の8の字結びだけ

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    前回は、リギングプレートで、ロープを設置する手法を紹介しました。
    やはり、シングルアンカーよりも、ダブルアンカー・Yハングのほうが、優れたリスク低減措置でした。
    でも、ラビットノットという結策をマスターしないと、運用できませんでした。
    結策の基本は、8の字結びです。
    なんとか基本の結び一つで運用できないものでしょうか?

    あります! いい方法が…♫

    DSC08628_RDSC08630_R写真のように、8の字結びのループを、両方のコネクタに連結します。
    2個のコネクタの成す内角は、約30°ですから、負荷はほぼ50%に軽減します。
    作業者の体重を100kgと仮定した場合、コネクタに及ぼす静止荷重は、たったの50kg(500N)ですから、メインロープとライフラインを一緒に設置しても大丈夫です。
    アルミ製のコネクタの破断強度は、EN規格で20kN以上(しかもダブルで40kN以上)です。
    墜落阻止時の衝撃荷重は、EN規格で6kN以下ですから、壊れる可能性はありません。
    また、小型のリギングプレート(ペツルのポー・サイズS)でも、最少破断強度は36kNですから、同じようにアンカーとして使用できます。DSC08636_RDSC08637_R

    基本の8の字結びだけでロープを設置して、負荷の軽減が図れるこうしたメソッドを、ベーシックアンカーといいます。

    ベーシックアンカーは、リギングプレートの他に、絶対に壊れないI形鋼やH鋼のような、構造鉄骨を支持物とした場合のメソッドです。

    DSC08647_R写真のように、構造鉄骨にスリングを2本掛けて、アンカーをつくります。
    ラビットノットでロープを設置すれば、ダブルアンカー・Yハングになります。

    でも支持物は、I形鋼ですから、わざわざスリングを離して、Yの形にする必要はありません。

    DSC08651_RDSC08650_R2本まとめて掛けます。
    これで荷重分散は、完璧50%です。
    そして双方のコネクタに、基本の8の字結びでメインロープとライフラインを一緒に設置します。

    スリングの破断強度は、ロープと同じ22kNです。
    写真のように掛けると、倍の強度の44kNになります。
    墜落阻止時の衝撃荷重で、切れる可能性はありません。

    DSC08653_RDSC08657_Rさらに、二つのコネクタのゲートの向きを、それぞれ逆方向にします。
    これでロープがはずれる可能性を許容範囲まで低減させます。
    しかもコネクタには、はずれ止めの安全環が付いています。
    ちゃんと締めれば、はずれません。
    その安全環のネジを、下に向けると、ロープがはずれる可能性は天文学的数字まで低減するでしょう。
    ひとりでに、上に向かって緩んでいくネジはありません。

    支持物には、丸環のように、1個では不安なモノと、構造鉄骨のように、1個で十分使えるモノがあります。
    ロープの設置をふくむ作業計画は、事業者とスーパーバイザーの仕事です。
    そして設置は、職長が、決められた作業計画に基づいて指揮します。
    設置メソッドの良否の判断を、個々の作業者に求めてはいけません。

    改正省令の通達は、事業者に対し、「メインロープ及びライフライン緊結するためのそれぞれの支持物の位置及び状態並びにその周囲の状態」、「切断のおそれのある箇所の有無並びにその位置及びその状態」を、「あらかじめ調査し、その結果を記録しておけなければならない」と定めています。
    さらに「調査により知り得たところに適応する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければばらないこと」としています。

    早い話が、「現地調査を行って、リスクアセスメントをやって、作業計画を立て、それらを記録して、周知徹底を図りなさい」ということです。

    また、調査方法については、「発注者や施設の所有者・管理者等からの情報の把握等の方法があること」、「調査が適切に行われるよう、事業者と発注者との間であらかじめ必要な連絡調整を行うことが望ましい」としています。

    ロープ高所作業の国内法は、作業者に特別教育をさせるだけでなく、事業者責任と発注者責任についても言及しています。

    適用は、28年1月1日からです。

    ご安全に

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