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  • 身体保持器具って何だ?

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    身体保持器具って何でしょう?
    はじめて聞く言葉に戸惑っている人は、少なくないのではないでしょうか?
    労働安全衛生規則第539条の改正が告示されるまで、私も聞いたことがありませんでした。

    労働安全衛生規則第593条は、「身体保持器具は、メインロープに接続器具を用いて確実に取り付けること。」と定めています。
    厚生労働省通達、基発0805第1号の3-1-1-(2)-①によれば、接続器具とはディッセンダー(下降器具)とアッセンダー(高登器具)のことだといいますから、世界的常識に鑑みて、身体保持器具はシットハーネスを指すと推察されます。

    国産の垂直面用ハーネス
    国産の垂直面用ハーネス
    垂直面用ハーネスを装着中
    装着に時間がかかる

    「安全帯の規格」では、シットハーネスのことを垂直面用ハーネスといいますが、確かに当該通達の3-1-1-(2)-②-ウ は、「身体保持器具に使用するもののうち、垂直面用ハーネスにあっては11.5キロニュートンの~」と記し、垂直面用ハーネスが身体保持器具であることを、明確に示しています。
    垂直面用ハーネスは、「安全帯の規格」において、胴ベルト型と同じ1種安全帯に属していますが、構造がシットハーネスなので、作業者がロープにつり下がった状態で身体を保持することが可能です。
    しかし、残念なことに、国産の垂直面用ハーネスは、欧州の製品に比べると、商品価値が劣ります。
    装着に時間がかかりすぎ、時間に制限のある講習会での使用は困難です。(受講者が15人をこえたらムリ)
    装着感が悪く、現場での使用には耐えられないでしょう。

    EN 358 適合の垂直面用ハーネス
    EN 358 及び813 適合の垂直面用ハーネス
    下降器具はハーネスに取り付けるのが常識
    下降器具はハーネスのD環に取り付ける
    ブランコ台はハーネスに取り付ける
    ブランコ台もハーネスのD環に取り付ける

    一方、欧州の垂直面用ハーネスは、EN358及びEN813 の規格によって15キロニュートンの破断強度が要求されています。
    これは安全帯の規格を十分にクリアする強度です。
    使用感の良さから、多くのユーザーがペツルを使用しています。(ペツルは保護具の代名詞)

    それでは、使用方法を説明します。

    ① 垂直面用ハーネスの腹部D環に、接続器具(下降器具または高登器具)を取り付けます。
    ② ブランコ台を使用するときは、垂直面用ハーネスの腹部D環に取り付けます。
    垂直面用ハーネスが身体保持器具で、ブランコ台は作業者の身体を楽にさせるためのアイテムだからです。

    ブランコ台については、項をあらためて説明する必要があるので、次回をご期待ください。

    また基本的に、垂直面用ハーネスにライフラインは連結しません。
    これ(「安全帯の使用)についても、項をあらためて説明します。

    ご安全に

     

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  • 端部からの墜落は、こうやって防止する

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    厚生労働省は、ホームページで公開しているPDF版リーフレットで、ロープ高所作業における過去6年間(平成21年から26年)の死亡者数は24人であると記しています。
    %e6%ad%bb%e4%ba%a1%e8%80%85%e6%95%b0内訳は、ビルメンテナンス業(ガラスクリーニング業)が13人で、建設業(のり面保護工事)は11人となっています。
    ただし個人事業主、いわゆる一人親方の事故は、労災に該当しないので記録されませんから、じっさいの死亡者数はもっと多いはずです。
    それはともかく、死亡災害の96%は墜落によるもので、要因の内訳は、
    1番目が「作業中にロープが外れ(ほどけ)墜落」25%
    2番目が「屋上やのり肩での準備作業中や移動中に墜落」21%
    3番目が「作業中にロープと安全帯との接続を外して(接続せず)墜落」17%
    4番目が「ロープが切れて墜落」13%
    その他が25%

    ワーク リストレイン
    ワーク リストレイン

    しかし、ほんとうは2番の「屋上やのり肩での準備作業中や移動中に墜落」がいちばん多いのではないでしょうか。
    私がそのように思うのは、「屋上やのり肩での準備作業中や移動中に墜落」…という事故の原因は、事業者が労働者に対して「安全帯を使用させなかった」「有効な墜落防止を講じなかった」という安全配慮義務違反だろうと推察するからで、所轄の労働基準監督署に提出する報告書の書き様がなく、やむなく「ロープが外れました。ほどけちゃいました」と、ウソの報告をせざるをえなかったのでしょう。
    おそらく、「屋上やのり肩での準備作業中や移動中に墜落」は30%以上
    「作業中にロープと安全帯との接続を外して(接続せず)墜落」は17%で2番目
    「作業中にロープが外れ(ほどけ)墜落」は16%以下で、ほんとうは3番目!
    30%以上という数字の根拠は、東京労働局が公表しているガラスクリーニング業の墜落死災害の三割が「準備作業中や移動中に墜落」であることからの推察です。

    墜落阻止器具をセット
    墜落阻止器具をセット
    下降器具をセット
    下降器具をセット
    ダブルプロテクションよし!
    ダブルプロテクションよし!

    では、どうやったら準備作業中や移動中の作業者の墜落を防ぐことができるのか?
    それはワーク リストレイン(自己確保)を怠らないことです。
    ワーク リストレインとは、危険源(墜落する可能性のある場所)に作業者が接触できないよう、適切な長さのランヤードを用いて作業者を拘束することです。
    正しい「安全帯(胴ベルト型)の使用」が これに該当します。
    ワーク リストレインは、メインロープ及びライフラインの設置のときから必要になりますが、解除するタイミングが大切です。
    一般的な手順を以下に示します。写真も参照願います。
    ① 丸環にランヤードを連結してワーク リストレインを講じます。(必要に応じて水平親綱等を事前に設置)
    ② 安全な場所でライフラインに墜落阻止器具をセットします。
    ③ メインロープに接続器具(下降器具)をセットします。
    ④ ライフラインよし!メインロープよし!… このダブルプロテクションの確認は、作業指揮者の仕事です。(コンプライアンス)

    下方の安全確認
    下方の安全確認
    ワーク リストレイン解除
    ワーク リストレイン解除

    ④ 下降位置についたら、下方及び周囲の安全を確認します。
    ⑤ 異常がないことを確認したら、ワーク リストレインを解除します。
    ⑥ そしてレッツゴー

    作業環境によっては、ワーク リストレイン(安全帯の使用)ができない場合があります。
    事業者が、作業者に、安全帯の使用を命じても、安全帯を取り付ける設備がなかったら、どうしようもありません。
    安全衛生規則第539条の4で、現場の「調査及び記録」を義務付け、同条5で事前の調査を踏まえた「作業計画」を命じているのは そのためです。
    ワーク リストレインが困難な場合は、リスクアセスメントを行って、リスクの低減措置を講じなければなりませんが、危険源の摘み取り又は工学的対策が立たないときは、専門家に相談する必要があります。
    それでもだめなら「安全な方法が見つかるまで作業しない」いう選択肢があります。

    ワーク リストレイン解除
    ワーク リストレイン解除
    レッツゴー
    レッツゴー

    作業者がワーク リストレインを怠らないためには、「しつけ」が必要です。
    「しつけ」は中央災害防止協会がいうところの5Sです。「整理」「整頓」「清潔」「清掃」「しつけ」
    安全衛生規則第539条の6は、「作業指揮者」を定めるよう命じています。
    「作業指揮者」とは、決められた安全対策(ここではワーク リストレイン)を作業者に守らせるための監督です。

    ご安全に

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  • 長野県塩尻市で ロープ高所作業特別教育講習会

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    8月22日、長野県塩尻市で、ロープ高所作業特別教育講習会があり、インストラクターで参加しました。
    松本市で手広くガラスクリーニング業を営む知人に頼まれたものです。
    おりからの台風9号から、逃げるように走る中央高速は、台風の影響は全くなし。
    ラジオのスイッチを入れ、日本一おもしろい「中島みゆきのオールナイトニッポン月イチ」を聞きながらのドライブは快適
    それはともかく講習会は、松本市のガラスクリーニング業の方が6人受講しました。
    IMG_0996_RIMG_0997_R
    学科教育を、市民交流センター(えんぱーく)306会議室で行ったあと、松本歯科大学に移動して、屋上で実技教育を行いました。(終了書は一社日本産業用ロープアクセス協会が発行)

    さて、メインロープとライフラインの設置(リギング)は、どうやるのが良いか?
    安全衛生規則第539条の3の2の1は、「~メインロープ及びライフラインは、それぞれ異なる支持物に、外れないように確実に緊結すること」と定めていますが、支持物って何だ???
    おなじことをISO 22846-1 は、3の4で、「~独立したアンカーを持つ2本のロープ~」と定めています。
    2本のロープとはメインロープ及びライフラインのことですから、これにより支持物とは、アンカーと同義語であることが分かります。
    アンカーの用語の定義は、ISO 22846-1 の3の4に、以下の記載があります。
    ・・・「身体を固定したり、ロープを接続したりする固定物又は場所」・・・
    EN規格をみると、795というアンカーの規格があり、この規格に適合するスリングがアンカーです。
    IMG_1003_Rということで、壊れっこない頑丈なH鋼にスリングを2本取り付けて、それぞれにメインロープとライフラインをカラビナで緊結しました。
    これがコンプライアンスなのですが、カラビナにはゲートの安全環のネジの閉め忘れがあったり、安全環がひとりでに外れてしまったり、マイナーアクシスが起きたりと、いろんな潜在リスクがあるのでリスクアセスメントが必要です。
    IMG_1004_Rくわえてスリングには、カラビナのかけ間違いというヒューマンエラーが潜んでいます。(実際に墜落死亡災害有り)

    上記のリスクは、2個のカラビナを用いて、ゲートの向きを互い違いにすることにより、天文学低数値まで低減させることができます。
    これをベーシックアンカーといいます。

    だからといって1個の丸環に、メインロープ及びライフラインを設置して、ベーシックアンカーだというのは愚の骨頂です。2ロープ2ポイントの、ダブルプロテクションの原則に反しますから。IMG_1002_R

    またコンプライアンスだといって、6メートルも離れた位置にある2個の丸環に、それぞれメインロープ及びライフラインを個々に取り付けるのもおバカです。メインロープが切れたら作業者は大スウィングしてしまい、ライフラインが切れてしまうでしょう。運よくライフラインが切れなかったとしても、障害物にたたきつけられる高いリスクがあります。
    ベーシックアンカーは、H鋼のような絶対壊れない部材にスリングを2本かけてアンカーを作り、メインロープとライフラインを緊結する手法です。

    今日はここまで

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