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  • 端部からの墜落は、こうやって防止する

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    厚生労働省は、ホームページで公開しているPDF版リーフレットで、ロープ高所作業における過去6年間(平成21年から26年)の死亡者数は24人であると記しています。
    %e6%ad%bb%e4%ba%a1%e8%80%85%e6%95%b0内訳は、ビルメンテナンス業(ガラスクリーニング業)が13人で、建設業(のり面保護工事)は11人となっています。
    ただし個人事業主、いわゆる一人親方の事故は、労災に該当しないので記録されませんから、じっさいの死亡者数はもっと多いはずです。
    それはともかく、死亡災害の96%は墜落によるもので、要因の内訳は、
    1番目が「作業中にロープが外れ(ほどけ)墜落」25%
    2番目が「屋上やのり肩での準備作業中や移動中に墜落」21%
    3番目が「作業中にロープと安全帯との接続を外して(接続せず)墜落」17%
    4番目が「ロープが切れて墜落」13%
    その他が25%

    ワーク リストレイン
    ワーク リストレイン

    しかし、ほんとうは2番の「屋上やのり肩での準備作業中や移動中に墜落」がいちばん多いのではないでしょうか。
    私がそのように思うのは、「屋上やのり肩での準備作業中や移動中に墜落」…という事故の原因は、事業者が労働者に対して「安全帯を使用させなかった」「有効な墜落防止を講じなかった」という安全配慮義務違反だろうと推察するからで、所轄の労働基準監督署に提出する報告書の書き様がなく、やむなく「ロープが外れました。ほどけちゃいました」と、ウソの報告をせざるをえなかったのでしょう。
    おそらく、「屋上やのり肩での準備作業中や移動中に墜落」は30%以上
    「作業中にロープと安全帯との接続を外して(接続せず)墜落」は17%で2番目
    「作業中にロープが外れ(ほどけ)墜落」は16%以下で、ほんとうは3番目!
    30%以上という数字の根拠は、東京労働局が公表しているガラスクリーニング業の墜落死災害の三割が「準備作業中や移動中に墜落」であることからの推察です。

    墜落阻止器具をセット
    墜落阻止器具をセット
    下降器具をセット
    下降器具をセット
    ダブルプロテクションよし!
    ダブルプロテクションよし!

    では、どうやったら準備作業中や移動中の作業者の墜落を防ぐことができるのか?
    それはワーク リストレイン(自己確保)を怠らないことです。
    ワーク リストレインとは、危険源(墜落する可能性のある場所)に作業者が接触できないよう、適切な長さのランヤードを用いて作業者を拘束することです。
    正しい「安全帯(胴ベルト型)の使用」が これに該当します。
    ワーク リストレインは、メインロープ及びライフラインの設置のときから必要になりますが、解除するタイミングが大切です。
    一般的な手順を以下に示します。写真も参照願います。
    ① 丸環にランヤードを連結してワーク リストレインを講じます。(必要に応じて水平親綱等を事前に設置)
    ② 安全な場所でライフラインに墜落阻止器具をセットします。
    ③ メインロープに接続器具(下降器具)をセットします。
    ④ ライフラインよし!メインロープよし!… このダブルプロテクションの確認は、作業指揮者の仕事です。(コンプライアンス)

    下方の安全確認
    下方の安全確認
    ワーク リストレイン解除
    ワーク リストレイン解除

    ④ 下降位置についたら、下方及び周囲の安全を確認します。
    ⑤ 異常がないことを確認したら、ワーク リストレインを解除します。
    ⑥ そしてレッツゴー

    作業環境によっては、ワーク リストレイン(安全帯の使用)ができない場合があります。
    事業者が、作業者に、安全帯の使用を命じても、安全帯を取り付ける設備がなかったら、どうしようもありません。
    安全衛生規則第539条の4で、現場の「調査及び記録」を義務付け、同条5で事前の調査を踏まえた「作業計画」を命じているのは そのためです。
    ワーク リストレインが困難な場合は、リスクアセスメントを行って、リスクの低減措置を講じなければなりませんが、危険源の摘み取り又は工学的対策が立たないときは、専門家に相談する必要があります。
    それでもだめなら「安全な方法が見つかるまで作業しない」いう選択肢があります。

    ワーク リストレイン解除
    ワーク リストレイン解除
    レッツゴー
    レッツゴー

    作業者がワーク リストレインを怠らないためには、「しつけ」が必要です。
    「しつけ」は中央災害防止協会がいうところの5Sです。「整理」「整頓」「清潔」「清掃」「しつけ」
    安全衛生規則第539条の6は、「作業指揮者」を定めるよう命じています。
    「作業指揮者」とは、決められた安全対策(ここではワーク リストレイン)を作業者に守らせるための監督です。

    ご安全に

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  • 長野県塩尻市で ロープ高所作業特別教育講習会

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    8月22日、長野県塩尻市で、ロープ高所作業特別教育講習会があり、インストラクターで参加しました。
    松本市で手広くガラスクリーニング業を営む知人に頼まれたものです。
    おりからの台風9号から、逃げるように走る中央高速は、台風の影響は全くなし。
    ラジオのスイッチを入れ、日本一おもしろい「中島みゆきのオールナイトニッポン月イチ」を聞きながらのドライブは快適
    それはともかく講習会は、松本市のガラスクリーニング業の方が6人受講しました。
    IMG_0996_RIMG_0997_R
    学科教育を、市民交流センター(えんぱーく)306会議室で行ったあと、松本歯科大学に移動して、屋上で実技教育を行いました。(終了書は一社日本産業用ロープアクセス協会が発行)

    さて、メインロープとライフラインの設置(リギング)は、どうやるのが良いか?
    安全衛生規則第539条の3の2の1は、「~メインロープ及びライフラインは、それぞれ異なる支持物に、外れないように確実に緊結すること」と定めていますが、支持物って何だ???
    おなじことをISO 22846-1 は、3の4で、「~独立したアンカーを持つ2本のロープ~」と定めています。
    2本のロープとはメインロープ及びライフラインのことですから、これにより支持物とは、アンカーと同義語であることが分かります。
    アンカーの用語の定義は、ISO 22846-1 の3の4に、以下の記載があります。
    ・・・「身体を固定したり、ロープを接続したりする固定物又は場所」・・・
    EN規格をみると、795というアンカーの規格があり、この規格に適合するスリングがアンカーです。
    IMG_1003_Rということで、壊れっこない頑丈なH鋼にスリングを2本取り付けて、それぞれにメインロープとライフラインをカラビナで緊結しました。
    これがコンプライアンスなのですが、カラビナにはゲートの安全環のネジの閉め忘れがあったり、安全環がひとりでに外れてしまったり、マイナーアクシスが起きたりと、いろんな潜在リスクがあるのでリスクアセスメントが必要です。
    IMG_1004_Rくわえてスリングには、カラビナのかけ間違いというヒューマンエラーが潜んでいます。(実際に墜落死亡災害有り)

    上記のリスクは、2個のカラビナを用いて、ゲートの向きを互い違いにすることにより、天文学低数値まで低減させることができます。
    これをベーシックアンカーといいます。

    だからといって1個の丸環に、メインロープ及びライフラインを設置して、ベーシックアンカーだというのは愚の骨頂です。2ロープ2ポイントの、ダブルプロテクションの原則に反しますから。IMG_1002_R

    またコンプライアンスだといって、6メートルも離れた位置にある2個の丸環に、それぞれメインロープ及びライフラインを個々に取り付けるのもおバカです。メインロープが切れたら作業者は大スウィングしてしまい、ライフラインが切れてしまうでしょう。運よくライフラインが切れなかったとしても、障害物にたたきつけられる高いリスクがあります。
    ベーシックアンカーは、H鋼のような絶対壊れない部材にスリングを2本かけてアンカーを作り、メインロープとライフラインを緊結する手法です。

    今日はここまで

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  • 横浜で、ロープ高所作業特別教育講習会 全国から24人受講

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    8月19日、横浜のビッグロック日吉店で、ロープ高所作業特別教育を開催しました。
    北は北海道から南は九州まで、全国各地から24人の受講者が集いました。
    IMG_0937_RIMG_0941_RほかにIRATAのレベル1とレベル2の有資格者が10人、ロープアクセストレーニングに来ました。
    これだけの人数を集めて実技講習を行うためには、私一人では間に合いません。
    兵庫県から藤本会長においでいただき、スミス君にも手伝ってもらい、IRATAレベル3テクニシャン3人でインストラクターを務めました。

    IMG_0949_RIMG_0950_R講習会では、ISO 22846に準拠したロープ高所作業の手法、すなわちダブルプロテクションの原則を、徹底的に指導しました。
    新設されたロープ高所作業の安全衛生規則第539条の2で、「メインロープ以外に、ライフラインを設ける必要がある」と定めたところは、ISO 22846に準拠しています。
    ただし「身体保持器具」を、「たとえばブランコ台」とする告示は、ISO 22846のダブルプロテクションの原則とは異なります。
    なぜならブランコ台は、墜落から作業者を保護するモノではないからです。
    安全衛生規則第539条に、ブランコ台の使用を義務付ける条文は、どこにも見当たりません。
    当然でしょう。アクセサリーなのですから。
    (国内法の「安全帯の規格」に、ブランコ台を安全帯と定める条文はありません。)

    IMG_0954_RIMG_0955_RIMG_0959_Rまあ、それはともかく、ロープが金属のエッジで容易に切れることを展示して、適切なロープの保護について指導しました。

    また、安全衛生規則第539条の附則で、「当分の間、ライフラインの設置の規定は適用しない」という経過措置がとられたディビエーションとリビレイ(リアンカー)ですが、本当はちゃんとライフラインが使用出来る技術であることを証明し、しかもレスキューが容易であることを展示しました。
    ライフラインは、メインロープが切れたときのバックアップですが、他にも、救助用ロープの役割があります。
    ライフラインを使用しないディビエーションとリビレイは、はなから同僚の救助をあきらめていることになります。
    消防に頼んでも、ディビエーションやリビレイで動けなくなった要救助者は、救助できないでしょう。
    消防は、そんな特殊な救助は、訓練していません。ざざ残念!
    IMG_0972_RIMG_0974_RIMG_0976_RIMG_0978_R

     

     

    IMG_0979_RIMG_0980_R(一社)日本産業用ロープアクセス協会は、全国により安全なロープ高所作業の手法を広めて、業界の安全確保に真剣に取り組んでいます。

    次回のロープアクセストレーニングは、9月16日の金曜日です。
    ロープ高所作業特別教育ではありません。
    10月末日~11月に開催されるIRATAトレーニングコース(国際ライセンス)の事前講習です。
    奮ってご参加願います。

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