10月10日~13日、ミュンヘンでIrata Technical Event and Conference が開催されました。
irataから招待状をもらったので、ちょっと行ってきました。
アセスメントでお世話になった懐かしい面々(ベンさん、チェビィーさん、マークさん、カールさん、リーさんら)と再会し、楽しい時間を過ごしました。
リスクアセスメントに関しては、かなり勉強できました。
現場の安全確保は、作業計画の段階でほぼ決定するというカールさんのお話は、たいへん参考になりました。

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有効な墜落防止措置を考える:のり面ロープ高所作業
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のり面ロープ高所作業:特別教育の実技訓練 のり面保護工事におけるロープ高所作業では、胴ベルト型安全帯に組み込まれたバックサイドベルトで作業者の身体を保持します。(そしてメインロープを昇降します。)
ご多分に漏れず当該ロープ高所作業も、今般の改正省令でライフラインの設置が義務付けられました。いまを遡ること14年前、安全帯の規格改正の折り、安全帯の構造指針においてバックサイドベルトは、垂直面用ハーネスと共に身体保持用の安全帯として3種安全帯に位置づけられていました。(改正後の安全帯の規格は十把一からげで 3種安全帯のカテゴリはなし)
当時、安全帯の規格改正委員会は、ロープ高所作業においては3種安全帯で作業者の身体を保持した場合でも、作業者を墜落から保護する安全帯とライフラインの接続は必須であると考えていました。
東京ガラスガラス外装クリーニング協会は、この考えを重く受け止め、会員各社に、これまで以上にブランコ作業におけるライフラインの設置を呼びかけたものです。
しかし、改正委員の一部から「のり面保護工事においてはライフラインを安全帯に接続すると逆に危険になる」との意見があり、結果、「のり面保護工事においてはライフラインの設置の義務は除外」と決まったのです。
しかるに最初に述べたとおり、省令の改正で、ライフラインの設置が義務付けられることになってしまいました。… いいのかなぁ~?バックサイドベルト:布製のブランコ台ですな 胴ベルト型安全帯に組み込まれたバックサイドベルト のり面ロープ高所作業で、ライフラインを安全帯に接続すると、なぜ危険になるのか、説明が必要でしょう。
作業手順を以下に示します。
① バックサイドベルトを、胴ベルト型安全帯に組み込む。
② バックサイドベルトを、「傾斜面用グリップ」(ランヤード2本)でメインロープに接続する。
③ 胴ベルト型安全帯を、「傾斜面用グリップ」(ランヤード1本)でライフラインに接続する。
④ ロープの昇降は、作業者の腕力による。
⑤ 昇降時、作業者は「傾斜面用グリップ」を把持し、メインロープとの接続位置を調節する。
⑥ 昇降時、作業者は「傾斜面用グリップ」を把持し、ライフラインとの接続位置を調節する。安全帯で墜落が止まった状態:特別教育実技訓練 安全帯で墜落が止まった状態-2:特別教育実技訓練 安全帯で墜落が止まった状態-3:特別教育実技訓練 おっと! ここでかしこい皆さんは 、⑤と⑥の手順にヒューマンエラーの可能性を発見したのではないでしょうか。
下降時に⑥の手順が遅れると、作業者は安全帯で宙吊りになるか、又はバランスを崩します。
危ないので下降時は、⑤の手順を行う前に⑥の手順を終了させておかなければなりませんが、厄介なことに⑤と⑥の操作は同時に行うことが可能です。「傾斜面用グリップ」は左右同時に解除が可能 でも、それは墜落防止措置を2つとも解除する行為で、きわめて危険です。
よい子は絶対にやってはいけません!
なるほど! 14年前に先人が、ライフラインの使用を否定した理由がうなずけます。
なぜそんな危ないことができるのかというと、傾斜面という環境では、メインロープに作業者の全体重がかからないので、双方の「傾斜面用グリップ」の機能を瞬時に同時解除できるからなのです。(こんなヒューマンエラーは、ロープに全体重がかかる垂直面では発生しません。傾斜面特有のリスクです。)
作業者が、メインロープにもライフラインにも接続されていない危険な時間は、きわめて短いかもしれませんが、墜落は突然発生します。
そしてヒトは、墜落時、握ったものを放さない… 墜落は止まらない!だからといって、ライフラインを設置しないわけにはいきません。
すでに省令で命じられたことなのですから…このヒューマンエラーのリスク低減対策として、「傾斜面用グリップ」を「スライド」(たとえばSSロリップ)に変更したらどうなるか…?
「スライド」は、風力発電機でタワーの梯子を登るときや、仮設ゴンドラの昇降時等において、垂直親綱に用いるデバイスです。
突然の墜落を止めることはできないので、ロープ高所作業で発生する墜落からは、作業者を保護することはできません。
繰り返しますが「スライド」(たとえばSSロリップ)は、両手を放してロープに吊り下がった状態で発生する突然の墜落は想定外で、ビルのカラスクリーニングの現場では、すでに墜落死亡災害が発生しています。
上記のロジックを、霞が関はちゃんとわかっていました。
そうでなければ、リーフレットと通達で「ライフラインとしてリトラクタ式墜落阻止器具を用いても差支えない」という型破りなメソッドを打ち出すはずがありませんから。びっくりしましたよ…
リトラクタ式墜落阻止器具とは、安全ブロックのことです。その手があったか…
安全ブロックは、内蔵されたロープの長さに限度があったり、角度が変わると正常に機能しなかったりと、運用制限はありますが、良い条件の下では優れた墜落防止機能がはたらきます。… 危険な衝撃荷重は発生しません… さすがです。モバイルフォールアレスター(アサップロック)でリスクを低減 リスク低下措置後の作業:特別教育実技訓練 リスク低下措置後の作業-2:特別教育実技訓練 これまで述べてきたように「傾斜面用グリップ」にはヒューマンエラーの可能性があり、「スライド」は使い物にならず、「安全ブロック」には運用制限がありました。
これらのリスクを許容しているうちは、作業が安全になる日は決して訪れないでしょう。…
まあ、それは飲んだくれの戯言と、一笑に付されたらそれまでですが、本来リスクバリューの見積りは主観です。(リスクアセスメント)… 憂さ晴らしにTanquerayは優しすぎます。
有効な選択肢が見つからないので、とりあえず今はEN-12841-A適合の墜落阻止器具に頼むよりほかありません。
tequila を飲み干して、モバイルフォールアレスター、アサップロックの登場です。
アサップロックは「グリップ」や「スライド」のようなカムロック式ではありません。(ジャミングローラー式)
カムロック式は、把持すると墜落が止まらないのが弱点で、それはEN-12841-Aの適合品でも同じです。
把持しても墜落が止まるジャミングローラーは、世界に「アサップロック」ただ一つです。最後に2007年、栃木県の松田川ダムで行われた高圧洗浄機メーカーのイベントで、ドイツ人のIRATA レベル3テクニシャン(セバスチャン君だったかな)が披露した「のり面ロープ高所作業」の写真をご覧いただきたいと思います。
やがて日本ののり面保護工事でも、こんなメソッド(産業用ロープアクセス)を採用する企業が現れることでしょう。
安全で高効率なのですから、当然です。 その日はとっても近いかも乾杯、Cheers、Prost!
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「ブランコ台への搭乗」を考える:作業計画の立て直し!
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万物は流転する… 紀元前500年頃のギリシャ人の哲学者、ヘラクレイトスの名言です。
同じことはいつまでも続きません。安全確保が難しい「ブランコ台への搭乗」 時の流れにともなって、ブランコ作業は手法が陳腐化し、ロープ高所作業の国際標準ISO-22846の規定とは程遠いものになってしまいました。
そんなことを、これまで延々と述べてきましたが、書ききれなかったことは一つや二つではありません。
今回は「ブランコ台への搭乗」という、いちばん難儀な作業手順について考えてみたいと思います。キャットウォークからの ブランコ台への搭乗は危険! 搭乗が困難な理由:壁がないのでブランコ台が固定できない。 「ブランコ台への搭乗」は、作業者が平面(安全な環境)から垂直面(危険な環境)へ移る動作です。
危険なので、初心者は怖がりますが、手慣れてくると、面白くなります。上手にできると、楽しくなります。
いまスポーツクライミングやボルダリングが流行っていますが、それは墜落の恐怖を体験したり、墜落しないよう身体をコントロールすることに、得も言われぬ満足感に浸れるからでしょう。
「ブランコ台への搭乗」が楽しいのは、これと似ています。「ブランコ台への搭乗」は、作業者にクライミング的体術が求められます。(とくにキャットウォークからの下降)
しかしロープ高所作業は、スポーツではありません。
誰もができる安全な方法(訓練は必要ですが)を立ち上げる必要があります。
ロープ高所作業において、欠くことのできない安全確保は、身体保持器具の使用による作業者の墜落からの保護にあります。(フルハーネスによる墜落からの保護はすべての高所作業に共通する)
身体保持器具は、垂直面用ハーネスを使用するのが正しく、ブランコ台を使用するのは不適切だと、事あるごとに述べてきました。
ロープの下降は、以下に示す4つの手順が基本です。
① フルハーネスをライフラインに接続し、墜落からの保護を図る。
② 下降器具は、垂直面用ハーネスのD環に取り付ける。
③下降は、壁面につり下げたフットテープ等(あぶみ)に立って始める。
④ ブランコ台は、必要に応じて垂直面用ハーネスのD環に取り付ける。
「ブランコ台への搭乗」という手順はありません。以下の写真を参照願います。ワーク リストレイン:適切な長さのランヤードで行動を制限し、墜落できないようにする。 ライフラインはフルハーネスに、メインロープは垂直面用ハーネスに接続する。 笠木をまたいで、あぶみに足をかける。 笠木をまたいで、あぶみに足をかける。 行動を制限しているワーク リストレインを解除する。 あぶみに立って壁面に出る。メインロープとライフラインの2重の墜落防止措置で保護されている。 あぶみから足を抜く。 下降する。ライフラインの接続器具はモバイルフォールアレスタ(アサップロック) 下降器具はロープから手を放しても墜落しない安全装置付き(アイディ) でも、メインロープとライフラインが高い位置(たとえば天井)に取り付けられている場合に限っては、ブランコ台に搭乗して下降したほうが合理的な場合もあるでしょう。
作業者は、平場(床に足がついた状態)でブランコ台に搭乗します。下降器具をブランコ台に取り付けたときは、下降器具とハーネスを連結する。 下降器具とハーネスの連結は、できるだけ短くする。 作業手順を以下に示します。
① フルハーネスをライフラインに接続し、墜落からの保護を図る。
② 下降器具をメインロープに接続する。
③ 下降器具にブランコ台を接続する。
④ ブランコ台に搭乗する。
⑤ カラビナ2個で、下降器具と垂直面用ハーネスを接続する。
⑥ 下方と周囲の安全を確認し、下降を開始する。⑤ の手順は、作業者がブランコ台から落ちないための墜落防止措置で、① の手順とあいまって、墜落からの2重の保護(ダブルプロテクション)となります。
下降器具は、作業者がロープから手を離してもロープが流れ出さない安全装置付き(ペツルのアイディS)を使用します。
繰り返しますが、「ブランコ台への搭乗」は、平場(床に足がついた状態)で行うので安全です。ブランコ台に乗る。 墜落防止措置が「フォールファクター1」をこえる。 ブランコ台に腰掛けて、やっと「フォールファクター1」 しかし、壁面につり下げたブランコ台への搭乗は、安全確保が困難です。
搭乗時に講じた墜落防止措置(ランヤード)が、「フォールファクター1」をこえてしまうからです。
もし墜落防止措置が、「フォールファクター1」以下に収まったとしたら、その時はワークリストレイン用のランヤードが長すぎた可能性があります。
ワークリストレイン用のランヤードは、ブランコ台に搭乗できるほど長く伸ばしてはいけません。
なぜならワークリストレインは、墜落するおそれのある場所に作業者が近づくことができないよう、行動を制限する措置なのですから。
また「フォールファクター1」をこえる墜落の衝撃荷重に対して、エネルギーアブソーバー付きのランヤードで作業者を保護したとすると、今度はライフライン側の墜落阻止器具(モバイルフォールアレスター)のエネルギーアブソーバーとあいまって、新たなリスクが発生します。
わっかるかなぁ… わっかんねぇだろうなぁ… エネルギーアブソーバーを2個使用すると、墜落時にエネルギーアブソーバーが開かず、衝撃荷重は低減しません。危険です!フォールファクターとは、墜落の深刻度を表す数字です。
墜落距離をランヤードの長さで割った商がその数値です。
0は、衝撃荷重がまったく発生しない(墜落しない)状態です。
2は、過大な衝撃荷重が発生する状態で、墜落の結果はもっとも深刻…です。
0~1が許容範囲ですが、1を許容範囲と認めないユーザー及びランヤードのメーカーがあるので注意が必要です。
「安全帯の規格」がメーカーに要求している8kN以下という衝撃荷重は、「フォールファクター1」の試験によるものです。「フォールファクター1」をこえると、墜落時に発生する衝撃荷重は大きくなります。
これは安全帯の規格においては想定外の墜落で、衝撃荷重の大きさも想定外です。
リスクが高いので、そんな作業計画は、普通は許可が下りません。
ブランコ作業では、「ブランコ台への搭乗」という「フォールファクター1」をこえる不安全行動が当たり前のように行われていますが、それは発生するリスクを許容しなかったら当該作業が成り立たないからです。
あまたの作業者が、毎日リスクをおかしてブランコ台に搭乗していますが、繰り返される不安全行動が、いつでも許容されているとなると、誰しもそこに潜む危険が見えなくなってしまいます。これはいけません。
作業手順及び作業計画の立て直しが必要です。まずは基本に立ち返ることが大切です。
先に述べた4つの手順をもう一度いいます。
① フルハーネスをライフラインに接続し、墜落からの保護を図る。
② 下降器具は、垂直面用ハーネスのD環に取り付ける。
③下降は、壁面につり下げたフットテープ等(あぶみ)に立って始める。
④ ブランコ台は、必要に応じて垂直面用ハーネスのD環に取り付ける。これにより「ブランコ台への搭乗」というムダな手順が摘み取られ、「フォールファクター1」をこえるリスクは消滅します。
ブランコ台は、身体保持器具(垂直面用ハーネス)に取り付けるアクセサリー ブランコ台は、身体保持器具のアクセサリー ブランコ台を取り付ける専用のアタッチメントがある身体保持器具 ブランコ台をハーネスに取り付けるタイミングは、あらかじめ屋上内で行ってもよいし、オンロープ状態になって身体を安定させてからでもよいし、それは環境次第です。
構造上、普通のブランコ台は使用できません。ご安全に
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