FTGロープアクセス

  • ベーシックアンカー

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    先のスレッドで、Yハングについてリスクアセスメントを行い、長いロープ(100m)を真ん中から2本に振り分けて、それぞれメインロープ及びライフラインとして使用することに対してのリスクは、十分に許容範囲 (すなわち安全) であることを明らかにしました。
    今回は、ベーシックアンカーの検証です。
    ベーシックアンカーは、H鋼やI形鋼などの構造鉄骨にメインロープ及びライフラインを取り付けるリギング法で、EN566及びEN795の規格に適合したスリングを使用します。
    横ズレによるスリングの切断のリスクを低減させるため、最近ではワイヤースリングが頻用されるようになりました。
    ここでは便宜上、単管パイプと繊維製スリング(ナイロンとダイニーマの混紡、縫製はポリエステル)を使用します。

    EN-566及びEN-795 適合のスリング
    鋼材にスリングをかけて支持物を2個つくり、振り分けたロープをそれぞれ接続します。
    結索はフィギュアオブ8オナバイトです。
    (鋼材は頑丈で壊れないモノなので単体でOK、支持物はスリングなので2本使用)
    それぞれ下降器具とモバイル墜落制止用器具をセットします。
    回避しなければならないリスクは、どこにも見当たりませんが…
    メインロープとライフラインは、つながっています。
    そのためメインロープがコネクターから外れたら、ライフライン及びモバイル墜落制止用器具によって墜落が制止される前に、下降器具で墜落が止まるのではあるまいか?その時発生する衝撃荷重は危険ではないのか?との質問がありました。
    回 答
    2個のコネクターは、安全環のネジが下向きなので、ひとりでに緩む可能性はありません。
    船舶のエンジン等の大きな振動で緩むことはありますが、特殊な事例なので今回は対象外。
    コネクターのゲートの向きが互い違いなので、ひとりでにロープが外れる可能性もありません。
    ロープは、マニュアル中のマニュアル、フィギュアオブ8オナバイトなので、ほどけません。
    ここまでやれば、ロープのループがコネクターから分離する可能性は、もはや天文学的数字です。
    ありえない事ながら、ループがコネクターから外れたと仮定しても、墜落距離は40㎝です。
    フォールファクターはきわめて小さく、発生する衝撃荷重は十分に許容範囲です。
    シットハーネスのD環と下降器具がちゃんと接続されていれば問題ありません。
    ベーシックアンカーは、ラビットノット(ダブルフィギュアオブ8オナバイト)でもOKです。
    ロープに大きな荷重がかかることが予測されるときは、ナインノットが用いられます。
    ナインノットのほうがフィギュアオブ8よりも結び目に及ぼす負荷が少ないといわれています。
    わたしなら、テンノットを選びます。
    いずれにしても、リギングしたロープは、 器具のすっぽ抜けを防止するため、末端から約30㎝の位置にストッパーノットを施す必要があります。
    つい一月ほど前、下降器具がすっぽ抜け、墜落して大けがをする事故が発生したばかりです。
    ガラスクリーニングの現場で、メインロープが約8m地面に達していなかったそうです。

    話は横道にそれますが、被災者はライフラインを使用していましたが、モバイル墜落制止用器具(ロッカー)の操作が不適切だったため、墜落が止まらなかったもの。
    この事故はヒューマンエラーで、メーカー責任はないと思われます。

    続けざまに3日の土曜日には、ブランコ台( フランクリン )の吊り索が切れて墜落し、大けがをしたという事故の情報が入ってきました。
    被災者は、ライフラインを使用していましたが、モバイル墜落制止用器具 (ロッカー)用のスリングが絡まったのでライフラインから外していたといいます。
    国内法に照らし合わせて、この事故は、ライフラインの未使用ということで片付けられるでしょう。
    また、フランクリンの吊り索はブランコ台の吊り索の破断強度(19kN)を満たしていない、と指摘されるかもしれません。
    しかし、下降器具とシットハーネスのD環を接続さえしていれば、発生するはずのない残念な事故なのです。
    国内法に、 下降器具とシットハーネスのD環を接続しなければならないという定めはありませんし、ブランコ台は身体保持器具として認められています。
    だからといって、安衛則の文面通りに実行したら(させたら)それは野蛮です。
    ブランコ台に工業規格はありません。
    シンギングロックのフランクリンのみならず、ペツルのポディウムも規格品ではありません。
    この事故も、PL法に抵触しておらず、メーカー責任はないと思われます。

    ブランコ台は、長時間の宙づり作業において、作業者の体を楽にしてくれる安全な道具ですが、墜落の危険から作業者を保護するPPE(個人用保護具)ではありません。
    メインロープは、墜落を未然に防止する保護具 (フォールファクター0)ですから、接続器具(下降器具)とシットハーネスは確実に接続する必要があります。
    ご安全に

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  • リギングのリスクアセスメント

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    リギングとは、ロープを取り付けることです。
    先のスレッドで、長いロープを真ん中で振り分けて、それぞれメインロープとライフラインとして使用するときの結索法をアップしましたが、詳細な説明の必要性を感じ、リスクアセスメントを行ってみることにしました。
    以下に示す写真をご覧ください。

    長いロープの真ん中をオーバーハンドノットで印を付けます。
    振り分けられた左右のロープに、それぞれフィギュアオブ8オナバイトでループを作ります。
    支持物Aにコネクターを接続し、ロープを2本とも取り付けます。
    支持物Bにアルパインバタフライでロープを2本とも取り付けます。
    Yの形に見えるので、Yハングといいます。
    荷重分散の目的もあるので、Yの内角は120度以内にする必要があります。
    90度で取り付けるのが分かりやすいでしょう。ぶら下がると60度くらいに変化します。
    支持物の破断強度は15kN以上のモノを使用する。
    コネクタの強度は25kN以上、安全環のネジは下向きで、ひとりでに緩む可能性はきわめて低い。
    そしてフィギュアオブ8オナバイトなので、ひとりでに解ける可能性はない。
    くわえてロープはEN-1891Aの規格品なので、強度等の信頼性はきわめて高い。
    ここまでやれば、事故が発生する可能性は天文学的数字です。
    それぞれ下降器具と墜落制止用器具をセットします。
    下降器具はアイディS、モバイル墜落制止用器具はアサップロックを使用しています。
    確認!ライフライン側のループを外してみると、ライフラインとメインロープは、それぞれ別々の支持物に取り付けられていることが証明できます。逆もまた真なり (法令遵守)
    支持物B側の ライフラインの ループが切れたと仮定します。
    支持物AとBの間隔は70㎝なので、下降器具は、すなわち作業者は、
    左に約35㎝以上(最大70㎝の可能性)スウィングします。
    わずかな距離の横ズレなので、リスクは許容範囲です。
    しかもライフラインの位置は、そのままなので安全です。
    ありえないことながら、コネクターからループが外れた場合を想定してみましょう。
    約40㎝墜落します。
    コネクターから下降器具までのロープの長さは、120㎝です。
    フォールファクターは、墜落した距離を繰り出されたロープの長さで割った数値なので、
    40÷120=0.3333 これがFF(フォールファクター)です。許容範囲ですが、
    実際には、もっと下降しているはずなので、さらにFFは低い数値になります。
    当然のことながら、その数値は、リスクの許容範囲にほかなりません。
    下降器具とシットハーネスのD環が確実に接続されていることが安全確保の条件です。
    次に、支持物AとCにロープを取り付けてみましょう。AとCの間隔は160㎝です。
    Yの内角が大きいので、ワイドYといいます。(リスクが高い)
    先に述べた内角120度以下のYハングは、スモールYといいます。(リスクが低い)
    このワイドYで、C側のアルパインバタフライのループが切れたと仮定しましょう。
    その場合、左に80㎝以上 スウィング(最大160㎝の可能性)するので危険です。
    作業者は障害物にたたきつけれれるかもしれません。
    場合によっては、メインロープがエッジと接触(横ズレ)して切断する可能性もあります。
    これらは、許容できない大きなリスクなので、回避しなければなりません。
    対策は、他の支持物で、安全にロープを取り付け直すのがいちばんです。
    もし他に支持物がなく、やむなくワイドYをするときは、コネクターを複数、互い違いに用いる等の工夫をして、リスクを低減させる必要があります。
    やむをえずワイドYをするときは、コネクターを複数用いて、互い違いにセットする等、リスクを低減する工夫が必要です。

    ご安全に

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  • 1本のロープを真ん中で振り分ける方法を教えます

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    先に述べたとおり、1本の長いロープを真ん中で2本に振り分け、それぞれメインロープ及びライフラインとして用いるのは、なかなか困難でした。
    過去に、東京労働局から「メインロープとライフラインは別々のロープを使用するように」と指導があったことを記憶しています。
    どういうことかというと、ロープの長さが不十分で、片方が地面まで届いておらず、その結果、墜落災害が発生した事例が少なからずあったのです。(残念ながら今年も発生)
    とはいえ、この事例をもって、長いロープを2本に振り分けてはいけないと決めつけるのは早計であると思います。
    所詮、長さが不十分な短いロープは地面に達しませんから。

    長さ100メートルのロープを真ん中で切って、50メートルを2本作ることには抵抗があります。
    100メートルの長さのロープを失うことになってしまうのですから。

    ロープの真ん中にループを作ります。これはロープの真ん中である印です。
    2本に振り分けられたロープに、それぞれフィギュアオブ8オナバイトでループを作ります。
    これにより、それぞれメインロープ及びライフラインとして使用できます。
    それが証拠に、真ん中の印の結びをほどいてみましょう(解く必要はないが)。切断すれば別々のロープですよね(笑)だからといって、切ってしまったらもったいない。

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