新安衛則第539条の7は、ロープ高所作業を行うときは、当該作業を行う労働者に「安全帯を使用」させなければならない。安全帯はライフラインに取り付けなければならない云々と定めています。
しかし当該規定は、安全の最低基準であり、最高基準ではありません。
「安全帯の規格」上の安全帯は、これもまた安全の最低基準です。
安全帯は「作業床のある環境で使用する作業者の万が一の墜落を阻止するための保護具」(安全帯使用指針)です。
足の着かない垂直の環境で使用するものではありません。
また、「安全帯の規格」上のライフライン及びグリップも、ロープ高所作業における運用は、本来は想定外です。
なぜならライフライン上の「グリップ」の位置をコントロールする場合、登・下降ごとに(ブランコ作業は下降のみ)片手で本体を下方に押し込み、グリップの機能を解除しなければならず、その都度、墜落防止システムがオフになるからです。
このリスクを許容して行われるのがロープ高所作業・ブランコ作業ですが、他のロープ高所作業(たとえばロープアクセス)に同じリスクを背負わせることはできません。
もともとライフラインは「垂直親綱」といい、その「垂直親綱」上のグリップの位置は職長によって決められ、作業者が勝手に位置を変えることは禁じられています。
そんなデバイスを、ロープ高所作業へ転用するのです。
最低限の安全確保は可能かもしれませんが、誤解をおそれずに言うならば、野蛮で、おっかなくって、私は使いたくありません。
リスクアセスメント上、ペツル製のアサップロックを主とする欧州規格のモバイルフォールアレスターが必要です。
写真は、ロープ高所作業によるシール打ち替え工事です。
作業者は、ペツル製のアバオボッドクロールファストという専用のハーネスを装着し、ライフラインはメインロープと同じセミスタティックロープを使用し、墜落阻止器具もまたペツルのアサップロックという高性能のデバイスです。(ディセンダーは安全装置付き、ペツルのアイディSを使用)
作業者は、最新鋭のデバイスで墜落の危険から保護されています。
最低基準である「安全帯の規格」上の「安全帯」や、ライフライン及びグリップで、これほどの安全確保と作業性の良さは望めません。
しかも作業者は、IRATAの技能認定審査に合格したロープアクセステクニシャンです。
ロープの設置も、養生も、特別教育レベルでは、理解できないテクニックでしょう。
このような、ロープ高所作業の最高基準である産業用ロープアクセスを、最低基準である新安衛則に当てはめて規制することは不条理であり、「安全帯」の使用を命じるなどして無理に規制すれば、新安衛則の目的である安全対策の強化とは、ほど遠いものになってしまうこと間違いありません。
あなたも、IRATAトレーニングに挑戦してみてください。
ロープ高所作業の最先端の安全技術が、ご理解いただけます。
ご安全に
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