2006年以降、国内でもロープアクセスの資器材が入手できるようになってなお、ブランコ作業において三つ縒りロープと安全帯が今日に至るまで使用され続けているのは、いったいなぜなのでしょうか?
80年代の初め、日本ガラスクリーニング協会(東京GCAの前身)は、ブランコ作業のマニュアルを作成するに当たり、当該作業の安全の良否の判断を行政(今の東京労働局)に相談しました。
今でいうところの、リスクアセスメントを行ったわけです。(リスクの低減措置を講じるさい、必要に応じて行政方の指導を仰ぐ、または専門家に相談する…)
そこで行政は、ブランコ作業も高所作業の一つであろうから、垂直親綱を設置して、安全帯と連結し、作業者の墜落を図ってくれるよう指導しました。
当時のブランコ作業は、一本吊りが主流で、墜落災害がときどき発生するリスクの高い作業でした。
災害の主な原因は、屋上からの転落や、ロープの外れ・ほどけでしたが、総じて有効な墜落防止措置が講じられていませんでしたから、事故を起こした事業所は、行政から業務改善命令を受け、「安全帯の使用」が義務付けられました。
「安全帯の規格」は、安全の最低基準を定めた法律ですが、最高基準ではありません。
しかも安全帯は、「足場のある環境で使用する作業者の万が一の墜落を阻止する保護具」で、ブランコ作業というオンロープでの運用を認めることは、拡大解釈にほかなりません。
それでも、行政指導を受ける事業所が増えるごとに、ブランコ作業が、三つ縒りロープ(親綱)と安全帯に、がんじがらめに縛られるハメになり、いつしか最低基準の「安全帯の規格」が最高基準に錯覚されてしまいました。
今となっては、行政も民間も、困ったなぁとおもっているのが実情ではないでしょうか。
ブランコ作業の法制化は確実に進んでいるようです。
しかし「安全帯の規格」までは変わらないでしょう。
そのため、三つ縒りロープと安全帯という手法が、法的に認められるかどうか、たいへん気にしている向きが多くあると聞きます。
しかし、心配は無用だと思います。
なぜなら、旧態依然の手法がそのまま残っても、リスクアセスメントが義務付けられています。
ブランコ作業の資器材は、リスクアセスメントによって、産業用ロープアクセスの資器材に変わる運命にあります。
たとえば下降器具の代用品であるシャックルは、工学的対策によって、ペツルのアイディに代表されるEN12841-C 規格の安全装置付き下降器具へ、取って代わるのは時間の問題でしょう。
こうなるとロープも同じで、EN1891-A規格のセミスタティックロープに代わり、三つ縒りロープは姿を消すことになります。
当然、技術も変わります。
たとえば、長いあいだ重宝されてきた「もやい結び(バウラインノット)」が陳腐化してしまったように、三つ縒りロープの運用術は、もはや通用しません。
11月11日は、東京GCA主催で、ブランコ作業安全教育講習会が開催されます。
興味のある方はご参加ください。
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