暑いさなか、ビルの窓ふきの現場で、墜落災害が多発しています。
比較的低いところからの墜落のため、死亡災害には至っていません。
運良く無傷♫ という事例もありました。(お医者の見立ても異常なし)
いずれもロープは2本とも切れておらず、結び目もそのままで、作業者だけが地面に叩きつけられたもの。(北海道の事故はメインロープの切断)
原因は、ディセンダー(下降器具)の操作に失敗し、ロープが突然流れ出したときにフォールアレスター(墜落阻止器具)が正常に機能せず、墜落が止まらなかったもの。
被災者は、みなさん共通して以下のデバイスを使用していました。
フォールアレスター:イタリア製のカム式
ディセンダー:ペツルのリグ
ロープ:フランス製のセミスタティック
なぜフォールアレスターが正常に機能しなかったかというと、下降時にストレスなく流れるよう左手でフォールアレスターのコネクタを握り、上方に上げたままにしたからです。
これではロープをグリップするカムの機能が失われてしまい、墜落は止まりっこありません。
この不安要素は、カム式のフォールアレスターに総じて潜むリスクです。
- アサップとアサップロックは、ジャミングローラー式なので、上記の不安要素はありません。リスクは摘み取られています。登・下降時の操作にストレスなし。
そして、フォールアレスターのコネクタを握った同じ手で、リグのハンドルを強く引くと、どうなるでしょうか?
リグにはアイディのようなパニック防止装置はありませんから、ちゃんとテールロープ(下降器具から下方のロープ)を握っていなかったら、あっというまに墜落してしまい、地面に叩きつけられてしまいます。
リグは、特別な現場で性能を発揮する熟練者向きのデバイスです。
ロープのコントロール機能は、リグよりアイディのほうが優れています。
じっさいエキスパートは、アイディを使用するのが普通です。
それなのに熟練者でない人が、なぜリグを使いたがるかというと、アイディよりも小さくて軽いからです。
件の、イタリア製のフォールアレスターも、小型で軽量です。
トレーニングを受けていない人は、性能を重視することができないため、「小さい」「軽い」「持ち運びやすい」「安価」などを理由にデバイスを選択する傾向があるようです。
販売店は、ユーザーによく説明する責任があるように思われてなりません。
ともかく問題は、こんな不安全で危険な用法が 「便利だよ ♫」という無責任な情報によって、作業者のあいだに広まりつつある現状です。
これ以上事故を起こさないために、重篤な事故に発展させないために、特にリグとイタリア製のフォールアレスターを使用している人には、実技トレーニングを含む安全教育を受けなおす必要があるように思われてなりません。
ご安全に!
最後になりましたが、情報のご提供者、取材のご協力者に、心から感謝申し上げます。
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