ロープ高所作業の法制化で、ブランコ作業の墜落災害は減るだろうか?


全国ガラス外装クリーニング協会連合会は、設立以来20年にわたり陳情を続けてきたブランコ作業の特別教育対象業務への追加が正式に決定し、5月18日に厚生労働省から省令改正案が発表されたと、号外を発行し、悲願結実を喜んでいます。

号外によれば、正式な省令改正は7月下旬で、8月以降、すべての事業者に対し、特別教育を受講させることが義務付けられるそうです。

公布の日から1年間の猶予期間の後は、特別教育を受講していない労働者を作業に従事させた事業者には、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられるそうです。

さて、ブランコ作業やロープアクセスなど、ロープ高所作業が法制化されることは、当該業務に携わる者にとって、大変喜ばしいことでありますが、手放しで喜ぶのは考え物です。

改正の内容を見ると、ガラスクリーニングのブランコ作業においては、技術的に何の改善もみられず、現状のまま… しかも特別教育は学科4時間、実技3時間の合計7時間… これでは、これまで長年、東京ガラス外装クリーニング協会が開催してきた当該作業の安全教育講習会や技能認定試験よりも時間的に劣るので、大丈夫かなぁと心配になります。

過去10年間のブランコ作業の墜落死亡災害は、東京だけで16件も発生しています。
この高い死亡災害の件数を減らすには、従来のブランコ作業のシステムを改めるとともに、墜落防止対策の見直しが不可欠であると思われてなりません。
帆船時代のボースンチェアに端を発する座床板(ブランコの板)をシステムの拠り所とするブランコ作業は、すでに陳腐化の一途をたどっていますから、リスクアセスメントが必要です。
また現行の安全帯の規格(省令)は、オンロープの高所作業は対象外ですから、使用する前に、それもリスクアセスメントが必要です。

本気で事故を無くしたいなら、IRATAと同様のシステムを採用するのがいちばんです。IRATAメンバーは世界で9万人を超えましたが、過去の死亡災害は1件です。

ご安全に


“ロープ高所作業の法制化で、ブランコ作業の墜落災害は減るだろうか?” への5件のフィードバック

  1. mc44

    事故原因の中に人手不足や無理矢理な作業時間の設定しなければならない現実
    屋上の状態 経費削減思考による道具の選別 
    何も高所作業事故がロープ作業時のみではない現実
    単価競争と色々と有ります。 
    価値観の向上が無い限り人間の本質は、変わりません。
     

    猶予期間一年で、どれだけの人間が講習を受けられる
    のか?疑問が残ります。

    根本的な事故原因が、其処にあるのでは?と思います

    しかし色々な方々が試行錯誤して決まった事だと思います。リアルを求めて従います。必ず上から下まで
    スムーズに受けられるように御願いしたいものです。

    全ての方々にお疲れ様でした。

  2. shin

    一旦事故が発生したら、生産は止まり、富も莫大に失われます。
    やらないほうがよかった! と、悔やんでも後の祭り…
    生産を第一と考えてしまう人の気持ちは危険です。
    安全第一で期待される本当の結果は、生産性の向上でしょう。
    事故を先取りし、未然に対策を立てることが大切です。

    当方、決定したロープ高所作業の省令は、積極的に遵守する者です。
    国内法よりも、高いレベルの安全を目指します。

  3. AKI

    災害を未然に防ぐ目的であるはずの基準が進歩しない事が残念です。
    これだけ科学的、工学的に発展した日本にしては緩過ぎますし、膨大な量の過去の事例も全く考慮されていないことが腹立たしい思いもします。
    この省令で災害や事故が減るとは厚労省も決して思っていないはずですから、これは厚労省の未必の故意と言えます!

  4. shin

    行政方を責めるのは気の毒だと思います。厚労省にロープアクセスに精通した人はいませんから…
    最悪なのは、法制化に向けて、召集された委員会のメンバーの中に、ただの一人もロープアクセスに精通したテクニシャンがいなかったことです。
    ビルメン業界と、土木の法面協会だけで、ロープ高所作業を論じても、それは義務教育の中学校程度の技術論にすぎません。
    特殊高所技術さんとIRATAを抜きに、ロープ高所作業の法制化に向けての委員会を開いたのがそもそものマチガイだったのです。
    後の祭りですが、決まったことは守りましょう。

  5. sky8

    以前に某協会の講習を受けたのですが、そこの教官とゆうのがロープの結び方も知らず、教本を
    棒読みだけの素人だったのを覚えています。今回の講習の内容を見ると必要でない道具小物が有り
    必要な学科がないように思います。やはり腰のものは必要最小限にすべきで複雑な操作は
    うっかりミスにつながります。又ロープの支点となる構造物の簡単な耐荷重計算ぐらいはできないと
    安心できません。教育に関係ありませんが、法制化するなら講習は国がやるべきで民間に委託するのは好ましくないと思います。講習を受けるにも会員優先で会員でないと費用も倍になるのは解せません。

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