ロープの取り付けを考える


先般、第11回目GCA技能認定試験が開催されましたが、試験課題の「ブランコ・ロープ取り付け実技」は、この11年間変わることなく、シングルアンカーが採用されてきました。シングルアンカーの基本
これは“メインロープとライフラインは別々の吊元を有する”という、ブランコ作業マニュアル(協会のルール)に則ったもので、基本的な考え方であり、初級者にはわかりやすい手法です。

ただ、際の現場で、そのまま運用するのは考え物です。
どういうことかというと、丸環は6メートル間隔で設置されているのが普通です。

そのため作業者がメインロープに吊り下がると、垂直に垂れ下がっていたライフラインは作業者側に引っ張られてしまい、斜めになってしまいます。
どんなリスクがあるか

養生板から外れる可能性は否定できません。ロープをエッジから保護する

この状態でメインロープが外れたり切れたりしたら、どうなるでしょうか?

ライフラインは笠木のエッジを横滑りします。

このときライフラインは、墜落が停止状態になったと同時に発生する衝撃荷重によって、大きなエネルギーが蓄積されていますから、切断の可能性がきわめて高くなります。
しかも、笠木のつなぎ目にロープが接触すると、切断の可能性は、かぎりなく100パーセントに近づきます。(死亡災害事例あり)
いずれも、作業を許可できないほど高いリスクです。

 

リスク低減対策の一つを、以下に示します。

丸環を2個使って(ダブルアンカー)、メインロープとライフラインを同じ位置に取り付けます。Yハング

ライフラインが横ズレする可能性はゼロです。

縦ズレのおそれはありますが、ちゃんとした養生の下では、ロープの切れる可能性は低く、そのリスクは許容範囲です。

もし養生でロープの切断・建物の保護ができないような場合は、建物にロープを接触させない方法を採用しばければなりませんが、これは上級者レベルの手法です。

ダブルアンカーについて補足します。

ダブルアンカーは、荷重分散が本来の目的です。
荷重分散とは、ロープの支点に大きな負荷をかけない手法です。
ダブルアンカーの下では、ロープはアルファベットのYの字を描きます(写真はYが逆さまです)
このYの字の内角が、30°以下のとき、負荷は50パーセントに低減します。
60°のときは、約60パーセント低減し、90°では約70パーセント低減します。
しかし120°になると、100パーセントになってしまい、負荷は低減しません。
シングルアンカーと同じ負荷ですから、荷重分散ではありません。
しかも、じっさいの現場で2個の丸環を使用してダブルアンカーをやれば、Yの字の内角は、約160°にもなることが珍しくありません。むしろ普通でしょう。これは約3倍の負荷ですから、高いリスクがあると言わざるをえません。
それでも事故なく安全に作業できるのは、ロープやカラビナに十分な強度と性能があるからです。
ロープやカラビナは消耗品です。
強度低下は避けられません。日々点検を怠らず、異常のあるモノは速やかに交換するように心がけましょう。

ご安全に


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