体を支えるハーネスのなかった時代、ロープで塗装作業やビルの窓ふき等に従事する作業者は、ロープに取り付けたブランコ台に腰掛けたものでした。
ブランコ台は必要不可欠なアイテムでしたから、この手の手法をブランコ作業と呼んだのでしょう。
こうしたロープ作業のメソッドは、船舶運用では古くからあり、こランコ台のことを『ボースンチェア』と呼んでいました。
こんにちロープアクセスでは、ブランコ台をコンフォートシートといいますが、長時間のロープアクセス作業は、ハーネスで体を支えるよりも、ブランコ台に腰掛けたほうが快適です。
とはいうものの、コンフォートシートは、作業者を墜落の危険から保護するPPEではありません。
それが証拠に、工業規格がありません。
板の強度や素材、吊り索の強度や素材に、制限はありませんから、写真のような手作りでもOK ♫
アクセサリーですから、壊れても作業者が墜落する可能性はないのです。
もしブランコ台の破断が、墜落の可能性を生じるものであるならば、その運用は甚だしく不安全であると言わざるをえません。
メインロープは身体保持の大切なロープです。
たかがブランコ台が壊れたくらいで、作業者の身体保持ができなくなってしまうようでは、とても安全なロープアクセス技術とはいえないでしょう。(墜落がバックアップロープで止まっても、それは事故です。ただちに救助しないと、作業者は宙吊りによって生命の危険にさらされます。)
ビルの窓ふきの世界では、このアクセサリーを仰々しく、『座床板』という場合があります。
どういうことかというと、80年代の初頭、東京GCAがブランコ作業の作業手順書を作った際、ブランコ作業の安全のよりどころを、『安全帯の規格』という法律に求めました。
しかし安全帯というものは、組立足場やゴンドラまたは高所作業車など、作業床のある環境で使用するもので、作業床のないブランコ作業は対象外です。
それでも、どうしてもブランコ作業にも作業床はあるぞ!という論法を立てる必要がありました。
そこで生まれたのが、『座床板』という造語…
作業者が座る、床板…で、『座床板』… これで安全帯が使えますってこじつけですが、今日では陳腐化した表現です。
現在、全国ガラスガラス外装クリーニング協会発刊の、新しいブランコ作業マニュアルにも、こうした詭弁は使われていません。
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