7月8日、東京ビルメンテナンス会館において、今年度最初の『ブランコ作業安全教育講習会』(東京GCA主催)が開催されました。
秋田、宮城、栃木、茨城、千葉、埼玉、東京、神奈川、愛知の各都県から37名の受講者が参加して、熱心に受講されました。
受講者のなかに、私のXカンパニーであるルナビルメンテナンスで、元同僚だった優秀な面々が数人いました。
IRATAのレベル1技師もいました。
懐かしかったですね。
はじめに、大山トレーナーから、労働安全衛生法および関係法令についての講義がありました。
わたしはテキストに沿って『4.ブランコ作業と関連用具』 から、『10.ロープの取り付け』 の項までの講義を担当しました。
ロープや下降器具、墜落組織具などを、ひとつひとつリスクアセスメントして、どうすればリスクを低減できるかについて解説したのです。
まず、いろんな切断事故から、三つ縒りロープ・八つ打ちロープにひそむリスク値が 中レベルであることを受講者の皆さんに指摘してもらいました。
中レベルのリスク値は、低レベルになるまでリスク値を下げないといけません。
『リスクが高いので、注意して作業しよう』… これでは、リスクは低減しません。
リスクアセスメントは具体的なモノ対策です。
外皮で被ったカーンマントル構造のロープを使用することが低減措置となります。
つぎに下降器具ですが、仮固定していたロープが外れて墜落した事例などから、安全装置のない下降器具にひそむリスクの見積もりは、中レベルになります。
中レベルのリスク値は、要対策なので、安全装置のある下降器具、たとえばペツルのアイディを使用して 許容範囲まで低減させなければなりません。
ただし、アイディ等はEN12841-Cというヨーロッパの工業規格品ですから、ロープも同じヨーロッパの規格品 EN1891-Aを使用しないといけません。
最近、『アイディを使ってロープが滑る』 という問い合わせがいくつかありましたが、聞き取り調査をしたところ、総じて日本製のロープを使用した結果でした。
日本製のロープはENの規格品ではありません。
まちがって使用すると、事故が起きても不思議はありません。
日本製のカーンマントルロープは、もともとS型ロープといって消防のレスキュー用に製造されていましたが、結局、アイディなどロープのコントロールデバイスにマッチせず、消防が使用をあきらめたという経緯があります。
今回の講習で特記すべきは、じっさいにトレーナーが体験した災害事例です。
ライフラインとスライド(SSロリップ)をちゃんと使用させていたのに、墜落が止まらず、死亡災害に至ってしまった… メーカーの保証は無かった… (墜落の直接原因はメインロープの解け)
衝撃的でした。
せっかくなので、ちょっと時間をもらって補足説明をしました。
スライドが、ファクターによっては墜落が止まらないことがあるというリスクは、メーカーもユーザー(電力会社)もよく知っています。
国内法・安全帯の規格では、このリスクは許容範囲です。
というのは、スライドは、高圧線の鉄塔や風力発電機などで 垂直のはしごを登るときに、親綱にとりつけて安全帯と連結し、万が一の墜落を防止するのが目的だからです。
いわゆるバックアップです。 バックアップは第2の墜落防止措置にほかなりません。
この場合、第1の墜落防止措置は、専用のはしご・昇降設備になります。
仮設ゴンドラでも、ライフラインとスライドが第2の墜落防止措置として使用されます。
それは仮設ゴンドラ自体が『作業床』で、コンプライアンスに則った第1の墜落防止措置だからです。
しかしブランコ作業は、メインロープ側に墜落防止措置が義務付けられていませんから、ライフラインとスライドが、いきなり第1の墜落防止措置です。
それ以上の墜落防止措置はありません。
したがって『墜落が止まらないことがある』というリスクが許容範囲なのかどうかは、たいへん疑問です。
こうした使用方法はメーカーの想定外でしょう。
事故が発生しても、自己責任ですから、メーカーに責任は問えません。
また墜落を止める機能は、スライドよりもグリップ(ロープチャック)のほうが確実です。
しかし下降のさい、レバーをにぎってグリップ機能を解除しなければなりません。
『溺れる者、藁をもつかむ』 といいます。
墜落の瞬間、おもわずグリップをつかむ可能性はだれも否定できないでしょう。
こうなると、もう墜落は止まりません。
ほんらいグリップは、職長が事前に垂直親綱に取り付けておくもので、作業者が自分の判断でグリップの位置を変えることは禁じられています。
ブランコ作業における墜落防止措置のリスクアセスメントに際しては、上記をよく理解する必要があります。
ご安全に!
以下はアンケートの一部です。
受講者の皆さん、ありがとうございました。
コメントを残す