ガラス外装メンテナンスのための現地調査

10月8日、久々にビルのガラス外装メンテナンスの仕事で、群馬県の伊香保温泉に行ってきました。
これまで当該建物のガラス清掃は「乗り出し作業」で行われてきたそうです。 「乗り出し作業」 はクライミングのフリーソロと同じで、バックアップがありません。失敗すれば即 墜落! グランドフォールです。(今日までどれだけの作業者が被災してきたことか…)
運よく屋根からバーティカル ライフライン(垂直親綱)を設置できたので、フォールアレストシステムを採用して、作業者を墜落から保護してきたそうです。
捕捉しますが、1.5メートルほどの庇があるため、ブランコ作業・ロープアクセスはできません。

フォールアレストシステムとは「墜落制止用器具の使用」のことですが、安全性に難があり、リスクアセスメントではリスク低減対策の「最後の砦」と位置付けられています。
難があるというのは、墜落制止用器具の使用は規則で義務づけられているものの「最後の砦」なので、抜かれたら即 墜落災害が発生するということです。
要は、法律だけでは効果が薄く、さらなる対策が必要なのです。

今回の調査で、これまでのフォールアレストシステムはそのままに、新たにワークポジショニングシステム(身体保持とでもいうのでしょうか)を採用できるよう(グリヨンの使用)、ボルトアンカーの設置を提案をすることができました。

事故発生時の作業者の救助計画は、屋根からレスキューロープを降ろして、スナッチレスキューです。
IRATA有資格者には いたって簡単で、レベル1(初級者)でもできないと困りますが、ブランコ作業のメッソドでは手も足も出ないでしょう。

フォールアレストシステムの一例
法律は遵守していますが、いいのかなぁ
グランドフォールはまぬがれても長時間の宙づりは危険です。
サスペンションイントラレンス(耐えがたい苦痛)の懸念
ケミカルアンカーと締め込アンカー
ハンガー付きステンレスボルト

やっていはイケナイ こんなこと

2丁掛け墜落制止用ランヤードを用いてラダーを登る「フォールアレストクライミング」をやりました。
これまで、高所作業の いろんな 現場に行きましたが、墜落制止用器具の不適切な組み立てを何度も目にしたものです。
まったくもって、空いた口がふさがりませんでした。
「墜落制止用器具の使用」すなわち「フォールアレストシステム」においては、正しい知識が必要です。

フォールアレストクライミング
フォールファクターは許容範囲の1を超えてはいけません。
ランヤード1本の墜落制止用器具
2丁掛けが推奨ですが、だからといって、もう1本加えるのはおバカです。
ランヤードが1本の墜落制止用器具
2丁掛けが安全だからといって、もう1本接続しようものなら、チコちゃんに叱られます。
ショックアブソーバーの並列使用になるので、墜落制止時にショックアブソーバーが伸びません。
そのため危険な衝撃が低減されず「ぼーっと生きてんじゃねーよ」と叱られちゃいます。
正しい塁落制止用2丁掛けランヤードは、ツインテールです。
作業環境によっては、胸部のD環へ接続したほうが安全な場合が多々あります。
(胸部にD環のないハーネスや、メーカーが使用を認めていないハーネスがあるので要注意)

墜落制止用器具だけに頼った作業は 墜落のリスクが最も高い

周知のとおり、来年2月から安全帯の使用が原則禁止になり、墜落制止用器具(フォールアレストハーネス)の使用が義務化されます。
要は、墜落の危険から作業者を保護するフォールアレストシステムがISOで定める国際標準と同等になるということで、ペツル製品のユーザーには何の問題も生じません。
これまでの安全教育やKY活動では「安全帯を使用すれば安全が確保される」とよく言われてきたものでしたが、実際には安全帯を使用しても墜落災害は防げなかったことから、このような法改正となったのでしょう。
だからといって「安全帯はいけません。安全は墜落制止用器具を使用すれば確保されます」と論じたりしたら、チコちゃんに叱られます。ボーっと生きてんじゃねーよ

なぜなら、墜落制止用器具による作業者の保護すなわちフォールアレストシステムは、リスクアセスメントにおけるリスク低減対策では最低レベルの「保護具の使用」にすぎないからです。
高所作業において「墜落制止用器具の使用」は最後の砦であり、これが抜かれたら墜落災害の発生です。

したがって、墜落制止用器具に頼る前に、効果の高い根本的対策または工学的対策を講じる必要があるのです。
やむをえず墜落制止用器具に頼る場合は、下方のクリアランス確保(墜落の途中で障害物に激突しないこと)および宙吊りからの救助対策が万全でなければなりません。
とくに足場の不安定な作業環境で墜落制止用器具のみに頼ると、危険きわまりないことは以下に示した写真でわかるでしょう。
ご安全に

足を踏み外したり手が滑ったりしたら間違いなく墜落します。こんなのは作業禁止です!

墜落制止時にランヤードがシャープなエッジで切断する高い可能性があります。作業禁止です!

他のランヤードで体を支えて墜落を未然に防止する必要があります。(ワークポジショニング)

U字吊りで体を保持して墜落を未然に防止する必要があります。(ワークポジショニング)

低い姿勢になることで高いリスクのフォールファクターを低く抑えることが可能です。

端部は墜落の可能性が高いので墜落制止用器具だけに頼るのは不安全です。

墜落制止用器具を使用しても リストレインまたはワークポジショニングで確保するほうが先決です!

端部では墜落制止用器具とワークポジショニング(身体保持器具)の併用で安全を確保します。