ディビエイションは、ロープの損傷・切断を防止するテクニックだが…

厚生労働省は、ブランコ作業や土木の法面作業など、ロープ高所作業の法制化に向けて、最後の追い込みのご様子です。

さて昨年の11月、当該法制化の関係者から、ディビエイションは、ロープの養生が必要ないのか?との質問を受けました。
ロープをシャープなエッジ等の危険源から保護する対策には、松竹梅の階級があります。
一番いいのが、ロープを危険源に接触させない方法です。
ディビエイションは、その特上の一つですから、ロープの養生は不要です。と回答しました。
危険源を「やわら」で覆うなどしてロープを保護するのは、次の階級の、上等な対策になります。
巻きつけ養生や、市販の置き型養生による保護は、並の対策です。値段もお安い

DSC07618DSC07620DSC07621そうしたところ、今度は、ロープが危険源に接触しないのであれば、ロープが1本でも安全なのではにか、との質問を受けました。

回答は、不安全なので許可できません!
ロープアクセスの ISO 22846 は、1本ロープでの作業を認めていません。
1本ロープのロープ高所作業は、世界標準に逆行します。
もし日本で認められるようなことにでもなれば、間違いなく世界の笑いものになるでしょう。
ディビエイションであっても、ロープ1本・アンカー1個に潜む高いリスクを、以下の連続写真で示します。
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ディビエイションのアンカーが破断すると、作業者は後方に振られ、ロープは危険源に接触してしまいます。このリスク対策が、アンカーを2個使用するダブルディビエイションです。

当然のことながら、2本目のロープ(ライフライン)でリスクを低減させる必要があります。
またディビエイションを通過する際は、そのアンカーのカラビナを一旦外し、ロープの掛け替えをします。
力技ですから容易ではありません。
失敗すると、危険なスウィングをしてしまいます。
このリスクの大きさは、作業者の技量によって左右されます。
作業者には、十分なテクニックが求められるので、技量の審査が必要です。

もしロープ高所作業で1本ロープが許されるとしたら、バックアップのライフラインが原因で、作業者を危険な状態に陥れる場合に限られるでしょう。
そのよう不安全な作業環境を、リスクアセスメントしたうえで、1本ロープを採用するのであれば、仕方がないかもしれません。
しかし、ディビエイションが、1本ロープの安全を保障するもではないことは、上に示した写真のとおりです。

ご安全に

IRATAトレーニング 5日目

IRATAは、受講者がアセスメントを受けるにあたって、4日以上トレーニングを義務付けています。
ここトーアス社では、確実に合格できるよう、5日間トレーニングを行います。
机上講習も充実しています。
カム式の墜落阻止器具と、パニックストップのない下降器具との併用で発生する、墜落のリスクを教えました。DSC07599
墜落阻止器具としてのシャントの使用が、いかに危険なものであるかも教えました。DSC07606

IRATAのレスキュー技術は、産業用に限定したものではありますが、消防の方々にもご参考にると言われています。
消防のレスキュー隊の隊長さんが見学に来られました。DSC07597

受講者のみなさんには、習得した技術の再確認をしてもらいました。DSC07617DSC07626DSC07622

IRATAトレーニング 4日目

5月28日 ロープに養生を施しながらの下降と、登り返しながらの養生通過の訓練をしました。
これは実践的なトレーニングのため、初心者にはクスが高く、事前に基本動作をマスターしていることが条件になります。
このトレーニングで、受講者の基本動作の習得度がわかります。
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ハイラインは、消防ではレスキュー訓練の花形ですが、設置に時間がかかるのが難点です。
ロープ高所作業では、レスキューの目的よりもむしろ、ロープアクセスのできない技術者のアクセスが可能なことから、積極的に作業に使用されています。
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