大手ビル管理会社でロープアクセス・ブランコ作業のセミナー

7月25日 大手ビル管理会社の社員教育施設(東京都下)において、ロープアクセス・ブランコ作業のセミナーがあり、講師として参加してきました。
この教育施設内には宿泊施設が併設されており、セミナーは合宿スタイルで行われ、夜は全国各地から集まった受講者のみなさんとの懇親会で、有意義なときを過ごすことができました。

当該セミナーは、ガラス清掃・高所作業の安全確保について 作業の管理・監督者が知識を高めるもので、教科書は『ブランコ作業マニュアル』(全国ガラス外装クリーニング連合会発刊)を使用しました。

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はじめに、ブランコ作業の安全のよりどころが、安全帯の規格(厚労省省令)であることを説明しました。
この省令は、墜落防止の最低基準を示した法律で、けっして高い基準ではありませんが、民間には 最高基準のごとくに勘違いされています。

なぜならば、墜落災害は、安全帯の未使用が原因になっている事例がむかしから多々あり、行政から『安全帯の使用』 を指導された事業所が多かったからです。
くわえて昨今、コンプライアンスが流行りことばになっていますが、安全帯の規格を遵守すれば、すなわち安全帯を使用すれば、安全が保証される!(保証されるのではないか という期待もふくめて) という神話が まかり通っています。

そんなことから、こんにち安全性の高い欧州規格のロープアクセス資器材・保護具が市場に出回るようになって、ブランコ作業にも使用されるようになり、 IRATAの認証を受けたロープアクセステクニシャンが200人を越えるようになってもなお、ブランコ作業の安全ルールは、安全帯の規格という最低基準によって成り立っているのです。

当然、安全の最低レベルには、それなりのリスクが潜んでいます。
リスクアセスメントを行って、許容範囲までリスクを低減させなければなりません。

『ブランコ作業マニュアル』 は、たいへん良い本で、国内で初めてロープアクセスを紹介したテキストです。
ロープアクセス用のロープや保護具の欧州規格を表記していますから、ブランコ作業の手法をリスクアセスメントするうえで役に立ちます。
じつは、ブランコ作業をリスクアセスメントして、ロープアクセスのレベルに引き上げ、リスクを低減しようというのが当該マニュアルのねらいなのです。

午前中は、ロープアクセス・ブランコ作業の安全に関わる講話に終始しました。
とくに水平親綱というものは、レストレイン(適切な長さのランヤードを使用して、危険な場所への作業者の立ち入りを制限する方法)が使用目的であり、大きな衝撃が発生する墜落は想定外である! という講話は衝撃的だったようです。
墜落阻止時の衝撃は、水平親綱に無限大の衝撃荷重をおよぼし、破断する高いリスクを生じさせます。
不用意に安全帯をかけて墜落すると、たいへん危険なので、注意が必要です。
水平親綱は、手の届く範囲の高い位置に設置するのが理想的です。

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午後から、実際にハーネスを装着し、アイディやアサップなど、ロープのコントロールデバイスの操作を体験してもらいました。

屋上に出て、丸環をつかってロープを取り付ける方法を見学してもらいました。
レスキューも、簡単なのをふたつ展示しました。

受講者のみなさま、世話役のみなさま、おつかれさまでした。
お手伝いしてくれた アンちゃん、おつかれさまでした。

これからも ご安全に

最後に、受講後に受講者に書いていただいた感想で、おもしろいのがありました。
「ぜったいに寝る! と思って参加したのに、寝なかった…(笑)」

ありがとうございました。

ロープアクセス技術講習会 7月19日

7月19日
きょうは、北海道の発電所組みが全員 ビッグロック日吉店に集まりました。
酷暑のなかでのトレーニングです。

クーラーを全開で稼働させていますが、暑いです。
外の方がはるかに涼しいのは、なぜ?

天井で、窮屈な姿勢でのレスキュー訓練は、やせる思いです。ん、やつれる

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来月、IRATAのレベル2 に挑戦する、もうひとりのヨッシーも来て、講習会は ワヤやんけ~ になってしまいました。

 

スライドで、墜落が止まらず… ブランコ作業安全教育講習会

7月8日、東京ビルメンテナンス会館において、今年度最初の『ブランコ作業安全教育講習会』(東京GCA主催)が開催されました。
秋田、宮城、栃木、茨城、千葉、埼玉、東京、神奈川、愛知の各都県から37名の受講者が参加して、熱心に受講されました。
受講者のなかに、私のXカンパニーであるルナビルメンテナンスで、元同僚だった優秀な面々が数人いました。
IRATAのレベル1技師もいました。
懐かしかったですね。

大山
はじめに、大山トレーナーから、労働安全衛生法および関係法令についての講義がありました。

わたしはテキストに沿って『4.ブランコ作業と関連用具』 から、『10.ロープの取り付け』 の項までの講義を担当しました。

ロープや下降器具、墜落組織具などを、ひとつひとつリスクアセスメントして、どうすればリスクを低減できるかについて解説したのです。

まず、いろんな切断事故から、三つ縒りロープ・八つ打ちロープにひそむリスク値が 中レベルであることを受講者の皆さんに指摘してもらいました。
中レベルのリスク値は、低レベルになるまでリスク値を下げないといけません。
『リスクが高いので、注意して作業しよう』… これでは、リスクは低減しません。
リスクアセスメントは具体的なモノ対策です。
外皮で被ったカーンマントル構造のロープを使用することが低減措置となります。

切断実験

 

つぎに下降器具ですが、仮固定していたロープが外れて墜落した事例などから、安全装置のない下降器具にひそむリスクの見積もりは、中レベルになります。
中レベルのリスク値は、要対策なので、安全装置のある下降器具、たとえばペツルのアイディを使用して 許容範囲まで低減させなければなりません。

ただし、アイディ等はEN12841-Cというヨーロッパの工業規格品ですから、ロープも同じヨーロッパの規格品 EN1891-Aを使用しないといけません。
最近、『アイディを使ってロープが滑る』 という問い合わせがいくつかありましたが、聞き取り調査をしたところ、総じて日本製のロープを使用した結果でした。
日本製のロープはENの規格品ではありません。
まちがって使用すると、事故が起きても不思議はありません。
日本製のカーンマントルロープは、もともとS型ロープといって消防のレスキュー用に製造されていましたが、結局、アイディなどロープのコントロールデバイスにマッチせず、消防が使用をあきらめたという経緯があります。

今回の講習で特記すべきは、じっさいにトレーナーが体験した災害事例です。
ライフラインとスライド(SSロリップ)をちゃんと使用させていたのに、墜落が止まらず、死亡災害に至ってしまった… メーカーの保証は無かった… (墜落の直接原因はメインロープの解け)
衝撃的でした。

せっかくなので、ちょっと時間をもらって補足説明をしました。

スライドが、ファクターによっては墜落が止まらないことがあるというリスクは、メーカーもユーザー(電力会社)もよく知っています。
国内法・安全帯の規格では、このリスクは許容範囲です。
というのは、スライドは、高圧線の鉄塔や風力発電機などで 垂直のはしごを登るときに、親綱にとりつけて安全帯と連結し、万が一の墜落を防止するのが目的だからです。
いわゆるバックアップです。 バックアップは第2の墜落防止措置にほかなりません。
この場合、第1の墜落防止措置は、専用のはしご・昇降設備になります。
仮設ゴンドラでも、ライフラインとスライドが第2の墜落防止措置として使用されます。
それは仮設ゴンドラ自体が『作業床』で、コンプライアンスに則った第1の墜落防止措置だからです。

しかしブランコ作業は、メインロープ側に墜落防止措置が義務付けられていませんから、ライフラインとスライドが、いきなり第1の墜落防止措置です。
それ以上の墜落防止措置はありません。
したがって『墜落が止まらないことがある』というリスクが許容範囲なのかどうかは、たいへん疑問です。

こうした使用方法はメーカーの想定外でしょう。
事故が発生しても、自己責任ですから、メーカーに責任は問えません。

また墜落を止める機能は、スライドよりもグリップ(ロープチャック)のほうが確実です。
しかし下降のさい、レバーをにぎってグリップ機能を解除しなければなりません。
『溺れる者、藁をもつかむ』 といいます。
墜落の瞬間、おもわずグリップをつかむ可能性はだれも否定できないでしょう。
こうなると、もう墜落は止まりません。
ほんらいグリップは、職長が事前に垂直親綱に取り付けておくもので、作業者が自分の判断でグリップの位置を変えることは禁じられています。

ブランコ作業における墜落防止措置のリスクアセスメントに際しては、上記をよく理解する必要があります。

ご安全に!

以下はアンケートの一部です。
受講者の皆さん、ありがとうございました。

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